金沢『片折(かたおり)』片折卓矢編。Vol.4 修業期間を“10年から5年”に
週休2日制の1日8時間勤務を実現している金沢の日本料理店『片折』。「一人前になるまで10年かかる」と言われる日本料理の世界において、あえて片折さんは「5年の修業で卒業させるよう努めています」と話します。その驚きの取り組みについて、お伺いしました。
文:阪口 香 / 撮影:田中祐樹
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浜田岳文さん(「株式会社アクセス・オール・エリア」代表)
1974年、兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮の不味い食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127カ国を踏破。一年の5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で食べ歩く。「OAD Top Restaurants」(世界規模のレストラン投票システム)のレビュアーランキングで2018年度から6年連続で1位を獲得、国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信している。2024年、自身初となる著書「美食の教養 -世界一の美食家が知っていること-」(ダイヤモンド社)を出版。
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片折卓矢さん(金沢『片折』店主)
1983年富山県氷見(ひみ)市生まれ。金沢の調理師専門学校を卒業後、金沢の料亭『つる幸(閉店)』に入り、11年修業。二番手として経験を積む。その後、別の料亭にて料理長を4年務める。2018年5月、『つる幸』時代の先輩であり、奥様の裕美さんと『片折』開店。
修業期間を、10年から5年に
- 浜田:
- 前回、『片折』流の働き方改革についてお伺いしましたが、週休2日制の1日8時間勤務では、技術の向上に長い年月がかかると推察されます。
- 片折:
- 一般的に、修業期間は10年と言われています。
掃除や洗い物などの雑用から始まり、仕込みを手伝い、やがて味付けやお客さんの前で庖丁を握ることが許される。料亭では八寸場や焼き場、煮方、板場…と、調理場ごとに先輩の下について経験を積まなければなりません。
もちろん長い期間、身を置くことで観察眼を養ったり、忍耐が鍛えられたり……ということもあるのですが、修業する弟子も、育てる親方もどちらも大変。『片折』では、その10年を5年にできないか、と思って工夫をしています。
- 浜田:
- 5年はかなり短いですね。でもその方が料理人を目指す人も増えると思いますし、業界も活性化しそうです。
- 片折:
- 前置きしておきたいのは、あくまでも修業期間を5年に、というところです。料理人としては、一人立ちしてからが本当の勝負。料理で“自分”を表現しなければ、本当の意味でお客さんから支持されません。僕自身も、納得のいく料理を提供できるまで長い時間がかかりました。
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