「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』10月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』の大将・佐々木 浩さんと弟子たちでコースの料理内容を決める献立会議。今回ご紹介するのは、10/2~11/1に提供する夜コースの会議模様です。前編は先付、前菜、お椀の3品について。数あるアイデアの中から、何を選び、優先するのか——。その取捨選択には、佐々木さんの判断と経験が光ります。初秋の趣きを感じさせつつ、お客に心から楽しんでもらえる料理とは。驚きや遊び心も込めた『さゝ木』ならではの献立が練られます。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:岡森大輔

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは右より、田中涼平さん、堀越優希さん、桑原汰知(たいち)さん、安達康次郎さん、下澤海里(かいり)さん、坂元悠馬さん、橋本來樹さん、松久岳衛(がくえい)さん、研修中の水口慶人さん。


先付と前菜

佐々木:
山々が錦秋に染まる11月は秋真っ盛り、といった感じやけど、10月はそこまでいってない。まだ暑さも続きそうやし、魚も端境期や。献立を立てるには難しい時季やけど、初秋を感じ、お客さまに楽しんで帰ってもらえるよう、みんなでアイデアを出し合いましょう!

では、まず先付から。考えてきた人はどんどん発表してくれ。
下澤:
はい。僕は伊勢海老をメインに考えました。シメジや柿、青菜を添え、白酢をかけてイクラをのせます。全体を和えて召し上がっていただく仕立てです。

田中:
僕もエビで考えました。
伊勢海老か車エビを半生にボイルし、剣先イカと合わせます。焼き立てのカブを台にして盛り、柿の角切りか丸抜き、あとペーストにしたものと柿酢を合わせて召し上がっていただきます。彩りに揚げた新ギンナンを添えます。
佐々木:
うん、どっちも秋らしくていいと思う。

ちなみに今日欠席の坂東から聞いてるのは、菱蟹をメインに、大黒しめじソテー、揚げたマコモダケ、ニンジン葉の白和え。加減酢ジュレに菊花を混ぜたものを添える、という先付や。
堀越:
僕はサワラで考えました。
翡翠ナスの台にのせ、10月からおいしくなるイチジクの「ビオレソリエス」のスライスを並べて。燻製した豆腐で作った硬めの白酢をかけ、蕎麦の実か炒り米、アーモンドなどで香ばしさを添えます。
桑原:
秋鯖を使えたら、と思っています。酢〆して炙ったものと焼きカブ、ミョウガを乱盛りにし、薬味を加えたショウガ餡のショーフロワに。天にマイクロハーブのロックチャイブを飾ります。

佐々木:
秋鯖かぁ……。僕も大好きなんやけど、苦手っていう人も多いからな。そして何より、寄生虫のアニサキスが怖い。冷凍したら死滅するけど、どうしても食感が変わるし、色味も悪くなる。生鯖が断然うまいんやけど。

僕が考えたのは、蒸した菱蟹に、叩きオクラと黄身酢、加減酢をかけ、紫色の菊花を散らしたもの。ストレートな先付やな。

どの先付にするか決めたいところやけど……次の料理を何にするかで変わってくるな。考えてきた人、発表して。

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