「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』12月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』の大将・佐々木 浩さんと弟子たちでコースの料理内容を練り上げる献立会議。今回お届けするのは、12/1~27に提供する夜コースの会議模様です。前編では先付、前菜、お椀の3品について。冬もいよいよ本番、お客がホッとするような仕立てを目指して意見を出し合いますが、議論は難航気味。それでも、全体のバランスや流れを見据え、佐々木さんの豊富な経験に裏打ちされた判断で、コースがかたちづくられていきます。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:ハリー中西

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

調理スタッフは右より、煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、堀越優希さん、桑原汰知(たいち)さん、安達康次郎さん、下澤海里(かいり)さん、坂元悠馬さん、橋本來樹さん、松久岳衛(がくえい)さん。


先付

佐々木:
12月は“師走”の名の通り慌ただしくなる時期。京都、とりわけ祇園では、事始めの挨拶回りやお祝い事が続いて、街の空気も変わってくるな。
そして本格的な寒さが到来するから、お客さんがあったまるような料理を出したい。加えて、この季節のウチの定番、焼き物とご飯物はカニでいく。ご飯物は、毎年お客さんが楽しみにしてくれてはるカニチャーハンや。

それらを踏まえて、献立を考えられればと思います。
まず頭は先付からいくか、前菜からスタートするか。どのように考えてる?
坂東:
先付からスタートできればと思っています。
メインはタラの白子である雲子。昆布だしで60℃の火入れをし、あられ柚子を混ぜたお粥の上に置き、周りにユリネ、食感で山くらげ(ステムレタス)か大根の醤油漬けを散らします。それを“泡酢”、酢や砂糖、塩で味付けしたメレンゲで覆い、雪のような見た目に。泡酢は常温、雲子やお粥はあったかい。温度のグラデーションが楽しめる料理です。

田中:
僕も雲子を使いたいと思っています。
台は玄米と白米を混ぜて炊き、表面をカリカリに焼いたもの。その上に醤油で焼いた雲子と熱々のカブをのせ、イクラを混ぜた大根おろし合わせて柚子を添えます。
熱い雲子にイクラおろしをのせて楽しんでいただいてもいいし、別々に食べていただいてもおいしい、という仕立てです。
佐々木:
なるほど。
その場合のイクラは醤油漬けじゃなくて、塩の方がええかもしれへんな。
堀越:
コッペガニを使った、華やかな仕立ての先付を考えました。柚釜に野菜とコッペガニを入れて蒸し、外子を加えたあんをかけ、お米のパフで食感を添えます。

もしくは、聖護院かぶを使った小さなかぶら蒸し。具はアマダイ、ギンナン、ユリネで、銀餡とワサビで仕上げます。塩で揉んだカブの軸を散らしてもいいな、と。

桑原:
僕は雲子を使った、あっさりしたおでんみたいな感じはどうかな、と思っています。
器に炊いた白菜、雲子を重ね、白菜だしにとろみをつけてかけ、春菊、上からショウガ、ネギ、玉ネギ、漬物にしたカブを入れた酸味ある塩ダレをかけた一品です。
佐々木:
雲子という意見が多いな。でも、どのパターンがいいものか……。
一旦保留にして、先に前菜とお椀を決めた方がいいかもな。

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