「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』9月の献立会議【前編】

9/3~10/1に提供するコース内容を師弟で話し合う、京都『衹園さゝ木』の献立会議。今年の9~10月は平年より気温が高いという予報が発表されていますが、暦の上では秋。9月9日は重陽の節句、9月23日には秋分の日を迎え、10月6日は中秋の名月です。日中は暑くとも、夕方、夜にかけては気温が落ち着き、秋めいた風が吹くようにもなります。そんな季節の変わり目を意識しながら、また、弟子たちの意見を汲み取りながら大将・佐々木 浩さんは献立を立てていきます。前編では先付、八寸、お椀、向付の会議模様をお届けします。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:高見尊裕

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

gio0030-1a_7328調理スタッフは、右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、堀越優希さん、桑原汰知(たいち)さん、下澤海里(かいり)さん。他、4月より一年生が入店。また、『衹園さゝ木』監修予定の店舗より3名が参加。


先付

佐々木:
9月ということで一応秋に入っていくんやけど、残暑が長引きそうやね。
とはいえ9月9日は重陽の節句、別名・菊の節句がある。この日は菊花を漬けた菊酒でお客さまをお出迎えしましょう。10月に入ったらすぐ中秋の名月、つまり芋名月があるから、月を意識したものや里芋の料理を出せたらええな。

あと、9月15日が「日本のキャビアの日」に制定されたんや。9月中旬は日本国内でキャビア生産の最盛期を迎える時期らしい。そして、チョウザメは長生きすると寿命が100年以上になることから、長寿の象徴でもあるねんて。献立のどこかでキャビアも使いたいなと思います。

では、先付からいきますか、前菜からいきますか。
坂東:
お月見をイメージした先付を考えました。
スッポンだしで玉子豆腐を作り、丸くくり抜いて器に盛ります。スッポンの身を入れるのもいいですし、煉り豆腐で茶巾にしてもいいかな、と。
オクラを縦に千切りにしてススキに、ハナビラタケか白キクラゲで雲に見立てて演出します。
佐々木:
月見の案はええと思うねんけど、玉子豆腐はちょっと庶民的かな。煉り豆腐を丸にとって冷やし固めるとかっこええねんけど、先付にもってくると重いと思う。
田中:
僕はキャビアを使えたらと思っています。
合わせるのは鱧。身を骨切りして皮を引き、生でいくか、火をいれるか。スダチを搾り、食感で野菜やオクラを添え、上からキャビアをたっぷりとかけます。
堀越:
秋なのでカマスを使いたいです。
小松菜を地漬けにしたものや焼き茄子、食感で長芋をサイコロ状に切ったものを添えて。スダチを利かせただしジュレをかけて、紫と黄色の菊の花できれいに盛り付けられたら。先付でキャビアを使うのであれば、ゴマ酢や白酢でもいいのかな、と思います。

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桑原:
白身魚と翡翠ナスをサイコロ状に切って重ね、以前、坂東さんが作った鮒ずしの飯(いい)のソースとジュレをかけ、キャビアをのせた一品を考えました。飯の酸味とキャビアの塩味で召し上がっていただきます。
倉田和典:
白和え衣を敷いた上に、帆立の酒煎り、蒸した素麺南瓜、シャインマスカットを合わせ、上にオリーブ油と塩でマリネした車海老をのせ、キャビアと穂ジソを散らした先付を考えました。

gio0030-1c_7248倉田さんは『衹園さゝ木』監修予定の店舗より参加。

佐々木:
爽やかさがあっていいね。
下澤:
ボタンエビとキャビアの先付を考えました。
器に地漬けした焼き茄子を敷き、昆布締めしたボタンエビと角切りにした長芋をのせ、柑橘を利かせたうまだしジュレをかけてキャビアをのせます。

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佐々木:
うまそうやけど、ボタンエビは難しいかな。必ず仕入れられるもんじゃないから。

さて、何にしよう。
僕は……カマスがええと思うな。秋、初秋という感じがする。
カマスに塩をして寝かし、酢〆して皮目をサッと炙ったものを2カンか3カン器に盛る。カマスはシャリとの相性が抜群やから合わせたいところやねんけど、後で鮨を出すからな……。あ、さっき意見が出た鮒ずしの飯のソースが合うんちゃうかな。あとスダチの割醤油もかけてさ。
ほんで野菜は小松菜と長芋、か。
堀越:
長芋をサイコロ状に切って盛るのはどうかなと思ってました。
佐々木:
うーーん……それなら三角に切って、小松菜と合わせて乱盛りにしよう。ほんで菊花を黄色7:紫色3くらいで散らそうか。秋らしい先付になると思う!

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