和インのマリアージュ

×カニ。強い旨み・甘みを酸で引き立たせる

11月から3月、主に山陰から北陸の日本海沿岸で水揚げされるズワイガニ。世界では3000もの種類のカニが生息しますが、日本人の、冬のズワイガニに対する想いはひとしおです。高価な食材であることも手伝って、ワイン選びは失敗したくないもの。「カニの強い旨みや甘みを生かすワイン選びをお教えしましょう」とは、心強い2名の指南役。今回も日本料理『翠』からお届けします。

文:阪口 香 / 撮影:太田恭史
松岡正浩さん(大阪・千里山|日本料理『柏屋』/エグゼクティブソムリエ)

尼崎市出身。山形大学に進学後、県内のホテルに就職。東京『タテル ヨシノ 芝』にてワインの基礎を覚え、パリ『ステラ マリス』へ。日本料理店『あい田』ではシェフソムリエとして迎えられた。帰国後、和歌山『オテル・ド・ヨシノ』にて支配人を務め、2016年、『柏屋』へ。フランス中心のワインと日本酒を織り交ぜたペアリングを提案。21年、レストランガイド「ゴ・エ・ミヨ」にてベストソムリエ賞受賞。(撮影:Rina)

高橋多弥さん(大阪・肥後橋|ワインバー『Sabor a mi(サボラミ)』/ソムリエール)

大阪市出身。辻調理師専門学校卒業後、料理人としてスタートを切り、サービスへと転身。ビストロ『ラ・トォルトゥーガ』やワインバー『ピュール北新地』などに勤めた後、『豚玉』(現『たこりき』)にて、今吉正力さんからヴァン・ナチュール※の熟成について薫陶を受ける。2018年、『サボラミ』開店。店では、フランス、イタリア、ドイツ、オーストリアのワインを中心に扱う。日本ワインへの造詣も深い。(撮影:Rina)

大屋友和さん(大阪・心斎橋|日本料理『翠』/店主)

高校卒業後、法善寺横丁『浪速割烹 㐂川』に入り、11年腕を磨く。2011年、東心斎橋にて独立。その後、16年に同じ東心斎橋内にて約3倍(席数は2倍)の空間へ移転。澄んだだしの椀や、白砂糖を使わず素材の滋味深さを生かした煮炊きものなど外連味(けれんみ)のない品や、和ハーブを用いた皿など、引き出しの多さでも魅了する。店に置くワインは、ほとんどがフランス産という。

※一般的には、ボルドー液を除く薬剤を一切使わず、有機栽培され手摘み収穫したブドウを使用。天然酵母による発酵で、補酸・補糖を行わず、酸化防止のために用いられる亜流酸塩(SO₂)の使用は極少量にとどめたワイン。フランスの「自然派ワイン協会(AVN)」の「ヴァン・ナチュール」の定義では、許容される合計SO₂の値は、赤ワイン・発泡性ワイン:30mg/ℓ、辛口白ワイン:40mg/ℓ、5g以上の残糖がある白ワイン:80mg/ℓとしている。

松岡正浩(以下:松岡)
カニは非常に旨みが強く、余韻が長い。その強さ・長さに添わせることができるのは、フランス・ブルゴーニュのピノ・ノワールでしょう。
高橋多弥(以下:高橋)
柔らかい果実味が熟成することによって和食のだしのような旨みと酸を感じさせ、飲んだ後も、口や鼻に細く長く留まります。
その味わいの特徴から、カニだけでなく「和食にはピノ・ノワール」と散々言われているのですが……。私、この王道を変えたいと思ってます! ピノ・ノワールはめっちゃ好きですけど、やはり少し高価ですし、他の美味しいマリアージュを見出したい。と、思って、今回はこの2本をお持ちしました。
この記事は会員限定記事です。

月額990円(税込)で限定記事が読み放題。
今なら初回30日間無料。

残り:3076文字/全文:3767文字
会員登録して全文を読む ログインして全文を読む

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事和インのマリアージュ

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です