盃と、ぐい吞【後編】
酒杯をテーマにお届けする今回の十問十答。後編は、『梶 古美術』梶 高明さんの奥様が開催した「百趣百盃(ひゃくしゅひゃくはい)」で展示された現代陶の数々をご紹介します。土ものあり、磁器あり、ガラス製あり。形も、大きさも、色使いも様々。その自由さが酒杯の面白さではありますが、はて、盃(さかずき)やぐい呑(のみ)のどこを見るべきか? どこに注目して選んだらよいのか? 梶さんの持論を展開していただきます。
※今回は、『菊乃井』村田知晴さんが欠席のため、特別編としてお届けします。
文:梶 高明 / 撮影:竹中稔彦
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答える人:梶 高明さん
『梶 古美術』七代目当主。その見識と目利きを頼りに、京都をはじめ全国の料理人が訪ねてくるという。朝日カルチャーセンターでは骨董講座の講師も担当。現在、「社団法人 茶道裏千家淡交会」講師、「NPO法人 日本料理アカデミー」正会員,「京都料理芽生会」賛助会員。
梶 古美術●京都市東山区新門前通東大路通西入ル梅本町260
kajiantiques.com/
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共に学ぶ人:梶 燦太さん
1993年、梶さんの次男として京都に生まれる。立命館アジア太平洋大学国際経営学部を卒業後、『梶 古美術』に入り、八代目となるべく勉強中。
(第6問)
盃の見どころとは?
- 梶 燦太(以下:燦太)
- うちの母が営む『うつわや あ花音』では、毎年11月、「百趣百盃」と銘打った盃展を開催していて、こちらに並べたのはそこで扱った盃の一部です。
- 梶 高明(以下:梶)
- こうして見ると、盃というのは多彩ですよね。材質も形も、大きさも。表現の自由さが盃の面白味だということは重々理解しているのですが、ただ自由なだけでは作品として軽くなってしまうので、私は小さな茶碗と捉えて、茶碗に等しいような世界観で見るようにしています。
盃は茶碗同様、直接口をつけるうつわでしょう。人の口はとても敏感ですから、口縁の当たりのよさは大切です。お酒が好きな人なら、香りを感じやすい形状も重要でしょう。そうなると鼻が入るくらい口径の広いものというのもポイントになったりしますよね。
でも、私が最も重要視するのは、高台回り。ここの造形が上手いと、きちっと古いものを見て、茶碗づくりからも学んで、小品だからと油断せずにつくっているな、と思います。
左/市野雅彦造 赤ドベ湯呑、右/丹波赤ドベイッチン盃。
どちらの赤い土も丹波の赤ドベと言われる鉄分の多い化粧土を使って装飾をしている。いずれも胴に刻まれた削りが面白く、高台の造りも巧みだ。
- 梶:
- 手の中でつい転がして見たくなる、古典好きの鑑賞眼をも満たすほどの見所のある酒杯です。
実は、ある時、お客様に酒杯が欲しいと言われたことがありました。その時たまたま持ち合わせがなく、素晴らしい出来栄えの初代須田菁華(すだせいか)の祥瑞(しょんずい)の湯呑をお見せしました。するとお客様が「これは湯呑とは書いてあるが、酒を呑むものとしてつくられたものだ」と仰られて…。湯呑の中にはぐい呑として使えるものがあることを知りました。左の赤ドベ湯呑はまさに大きさから言ってもその一つでしょう。
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