みりんの特性vol.6メイラード反応の香り
みりんの調理効果を検証するシリーズの最終回は、農学博士の川崎寛也先生の提案で、メイラード反応によって生まれる意外な香りの実験を行います。生タラコやシラス、牡蛎、昆布、カツオ節に、それぞれみりんを合わせて加熱すると、クッキーや松茸の香りに!? その実験から派生して、「煎り酒」ならぬ「煎りみりん」も誕生。京都・洛北の料亭『山ばな 平八茶屋』園部晋吾さんが仕立てた、煎りみりんの和え物にご注目を!
※今回使用するみりんは「本みりん」。「みりん風調味料」「みりんタイプ発酵調味料」ではありません。
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園部晋吾さん(京都・洛北『山ばな 平八茶屋』二十一代目)
昭和45年生まれ。日本大学経済学部を卒業後、大阪の料亭『花外楼』で3年修業。天正年間(安土桃山時代)創業の老舗『山ばな 平八茶屋』二十一代目に。2007年 京都府青年優秀技能者奨励賞(明日の名工)を受賞。「京都料理芽生(めばえ)会」第20代会長、NPO法人「日本料理アカデミー」副理事長などを歴任する。誠実で実直なお人柄。
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川崎寛也さん(農学博士)
1975年、兵庫県生まれ。京都大学大学院農学研究科にて伏木 亨教授に師事し、「おいしさの科学」を研究。「味の素㈱」食品研究所エグゼクティブスペシャリストであり、「日本料理アカデミー」理事。「関西食文化研究会」での基調講演でも活躍している。専門は、調理科学、食品科学など。近著に「おいしさをデザインする」「味・香り『こつ』の科学」(柴田書店)。
メイラード反応による、意外な香り
- 園部晋吾(以下:園部)
- 前回、「煮詰めみりん」を豆乳プリンのタレに使いましたが、花のような香りがして驚きました。これは、メイラード反応による香りの変化でしたね。
- 川崎寛也(以下:川崎)
- みりんを加熱し、メイラード反応を起こすことで生まれる香気成分が、スミレのような花の香りだったということです。この香気成分は、アミノ酸や糖の種類によって変わります。
- 園部:
- みりんと何か別の食材を合わせて加熱し、メイラード反応を起こすと、意外な香りが生まれる可能性があるというお話でした。今回はその実験ですね。
事前にお聞きしていた食材を用意しておきましたが、どんな基準で選ばれたのですか?
左奥から時計回りに、生タラコ(助子)、シラス、血合い入りのカツオ節、刻み昆布、生牡蛎。メイラード反応を促進させるため、生タラコ・シラス・生牡蛎はペーストに。それぞれ約倍量のみりんと合わせる。
- 川崎:
- アミノ酸が豊富に含まれている食材で、その主となるアミノ酸の種類が違うものを選びました。
以下の表は、アミノ酸の種類別に分けたメイラード反応によるにおい一覧です。
生タラコと牡蛎の主たるアミノ酸はロイシンやスレオニン、シラスはメチオニン、カツオ節はフェニルアラニン、昆布はグルタミンです。加熱すると、こんな香りが出てくる可能性があるんですよ。
アミノ酸の種類 | 加熱温度 | |
---|---|---|
100℃ | 180℃ | |
バリン | ライ麦パンのようなにおい | 刺激的なチョコレートのにおい |
ロイシン | 甘いチョコレートのにおい | チーズを焼いた不快なにおい |
イソロイシン | カビ臭 | ー |
フェニルアラニン | スミレの花のにおい | ライラックの花のにおい |
メチオニン | ジャガイモのにおい | ジャガイモのにおい |
スレオニン | チョコレートのにおい | 焦げ臭 |
ヒスチジン | ー | コーンブレッドの香り |
アスパラギン酸 | 砂糖菓子のにおい | カラメル臭 |
グルタミン | チョコレートのにおい | バターボールのにおい |
アルギニン | ポップコーンのにおい | 焦げた砂糖のにおい |
リジン | ー | パンのにおい |
プロリン | タンパク質の焦げたにおい | パンのにおい |
- 園部:
- タラコからチョコレートの香りがしたら面白いですが、ちょっと想像できません(笑)。早速やってみましょう。
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