【令和6年能登半島地震】支援のかたち「大阪一丸 人情溢れる なにわ料理男子」
3月31日、大阪・北新地で「令和6年能登半島地震」の復興支援イベントが行われました。チームの名は「大阪一丸 人情溢れる なにわ料理男子」。大阪の人気料理店の店主、スタッフ、助っ人たちが集まり、大盛況だった一日。彼らがイベント開催までに準備したこと、当日の料理内容やオペレーションをご紹介。また、次回4月29日に行うイベントについてもご案内します。
大阪の勢いある料理人が集結!
「能登半島地震で被災した人たちのために、何かできることはないか」——そう考えている飲食関係者は多く、日本各地、また、世界でさまざまな支援の輪が広がっている。
「WA・TO・BI」でもこれまで、
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と、いくつかの支援に関わる記事を配信してきた。
今回は、大阪の30代後半の飲食店店主が集まったチーム「大阪一丸 人情溢れる なにわ料理男子」が行った支援のかたちを紹介する。
主要メンバーは9名。
後列左より、
北新地・日本料理『割鮮 入たに』入谷元基さん
北新地・日本料理『料理屋 稲家(いなや)』稲家敬記さん
北新地・中国料理『TOMONO』友納(とものう) 亮さん
上本町・日本料理『幽玄』三船桂佑さん
西天満・日本料理『お料理 山田』山田晃弘さん
前列左より、
天神橋筋六丁目・日本料理『東茶屋 なかむら』中村 学さん
北新地・日本料理『和旬 たい喜』對喜享慶(たいき たかみち)さん
福島・『炭火割烹 いしい』野々原龍二さん
心斎橋・おでん『由堂(よしたか)』日野由堂さん
いずれも人気店で、予約困難店も少なくない。今、勢いのある料理人たちばかりだ。
そんな店主たちが定期的に集まり始めたのは2021~22年頃から。現在、西天満に移転した『お料理 山田』の山田さんを含め、北新地でオープンした時期が近かったこと、世代が近いことから営業後に集まるようになった。それから他エリアの店主たちも加わり、休日に料理屋へ行ったり旅行に行ったりする仲に。
昨年には「このメンバーでイベントやチャリティー活動など、何かかたちに残せたら」と話をしていた。そんな矢先、今回の震災が発災。
メンバー全員、「今こそ!」という気持ちで立ち上がった。
復興支援イベント開催までに決めるべきこと
主に、イベントまでに決めるべきこと・準備すべきことは、開催日時、開催場所、当日の流れ、提供メニュー&価格、オペレーション、告知方法、寄付先などがある。
メンバーたちは、中でも寄付先をどこにするか悩んでいた。
そんな中、2月後半に『幽玄』三船さん、『由堂』日野さん、『東茶屋 なかむら』中村さんの3人が他の大阪の料理人と共に能登へ炊き出しに行くことに。学校の家庭科室で料理を作り、被災者に温かい料理を届けた。そのタイミングで、奥能登の一軒家レストラン『日本料理 富成(とみなり)』冨成寿明(としあき)さんと話をする機会を得た。
2月下旬、能登へ炊き出しに行った時の様子。
学校の廊下に並ぶカップラーメンやお菓子、日用品雑貨などの物資は、学校内で避難生活を送っている人はもちろん、外部の方にも渡されるものだという。その物資を購入するための資金に充てるならば「日本サステイナブル・レストラン協会」への寄付がいいとアドバイスを受け、ここに決めた。
提供メニューはどうする?
イベント当日は、11:00~12:30、13:00~14:30、15:00~の3部制で、1部と2部は予約制、3部はウォークインとした。各店舗での告知で、予約は早々に埋まった。
『東茶屋 なかむら』中村さんが金沢出身で、元々、店で石川の食材を積極的に使っていたことから仕入れはスムーズだった。今回のイベントでも石川の食材を使い、店の名物をアレンジしたものや、このイベントでしか食べられないものなど、スペシャル感がありつつもバラエティに富んだラインアップに。
左上/『和旬 たい喜』對喜さん作「加賀蓮根の照り焼きと能登の野菜を使ったバケット二種盛り」800円。右上/『TOMONO』友納さん作「クリスピーチキン」1300円。左下/『割鮮 入たに』入谷さん作「能登牛タンカツ」1500円。右下/『お料理 山田』山田さん作「能登牛のローストビーフ」1600円。
左上/『幽玄』三船さん作「蓮根餅とすっぽん」1000円。右上/『由堂』日野さん作「大根とサエズリのおでん」1000円。左下/『東茶屋 なかむら』中村さん作「能登巻き」1000円。右下/『料理屋 稲家』稲家さん作「ホタルイカと筍の焼きそば」1300円。
左上/『炭火割烹 いしい』野々原さん作「一丸カレー」500円。右上/だし巻き600円。下左・右/助っ人で参加した北新地『すし 一馬(かずま)』数馬さんによる、握り寿司(2カン)1000円。
「気軽に食べていただけるように」と、料理はすべてアラカルトで提供。にも関わらず、グループで来店したお客の中には「全部食べたい!」と、全品注文することも珍しくなかった。普段、カウンター内にいる店主たちがテーブル席までサービスをしたり、多店舗の店主が横に並んで料理する姿などは特別感があり、店内は活気に満ちていた。
当日の店内の様子。カウンターの他、テーブル席もあり。北新地『食堂たのし』にて開催。
会の終わりには、メンバーを代表して『幽玄』三船さんと『由堂』日野さんが挨拶。
「2月末に行った炊き出しで能登の現状を知り、これからも自分たちができるかたちで支援ができればと思います」(三船さん)。「もともと、能登が大好きで年に1回、必ず行っていました。4/29にもイベントを行うので、よろしくお願い致します!」(日野さん)と語った。
会には、「日本サステイナブル・レストラン協会」の代表理事・下田屋 毅さんの姿も。
「日本サステイナブル・レストラン協会」は、飲食店の環境や社会の課題を解決するための活動をしている団体。加盟している『日本料理 富成』冨成さんが被災し、能登地震の支援を始めた。1月末からは「AAR Japan(難民を助ける会)」と力を合わせ、料理人の派遣も始めた。
「今回の支援金は、農家から野菜を購入したり、料理人の方の炊き出しの資金などに使わせていただきます。料理人の方が炊き出しをすると、美味しいのはもちろん、栄養バランスが取れたものが食べられ、健康状態も良くなります。活動や支援を続けていきたいと思っておりますので、今後とも、よろしくお願い致します」。
今回の復興支援イベントで集まり、寄付した金額は187万859円。
食べ手にとっては美味しく、楽しく支援できる機会で、普段の営業スタイルとは違う環境にワクワクする食事会となった。
次回の復興支援イベントは、4月29日
次回も石川・能登の食材を使った料理と日本酒をアラカルトで提供。より「お子さまからお年を召された方まで、気楽に楽しんでいただける場に」と、屋台スタイルで楽しめる場に。
イベント名:「大阪一丸 人情溢れる なにわ料理男子 屋台イベント」
開催日時:2024年4月29日(月・祝)12時から17時30分
開催場所:OSAKA FOOD LAB(大阪市北区中津1-1-36)
入場料:大人500円/人(高校生以下無料)料理・お酒は現金キャッシュオンスタイル
申し込み不要で、誰でも参加可能。会場内では器や日本酒の販売も行う予定だ。
「大阪一丸 人情溢れる なにわ料理男子 屋台イベント」での提供予定メニュー。左上/能登本まぐろ・能登アオリイカ・能登うなぎを使った「能登巻き」。右上/能登牛を使った肉寿司。左下/能登牛のローストビーフ(能登牛)とトマトのカプレーゼ。右下/能登海老を使ったエビカレー。
「大阪一丸」メンバーが登場した「WA・TO・BI」の記事
『幽玄』三船桂佑さん
魚介に合わせたい、「野菜ソース」のテクニック Vol.1
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【リターン編】夏の旬魚に合わせる、和食の「野菜の乳化ソース」 Vol.1
【リターン編】夏の旬魚に合わせる、和食の「野菜の乳化ソース」 Vol.2
『お料理 山田』山田晃弘さん
【レシピ付き】新しい松茸料理 Vol.1 大阪『お料理 山田』
『TOMONO』友納 亮さん
【レシピ付き】フカヒレの基礎を学ぶ Vol.1戻し方編
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『割鮮 入たに』入谷元基さん
【リターン編】和のフカヒレ料理に挑戦 Vol.1ステーキ編
【リターン編】和のフカヒレ料理に挑戦 Vol.2おでん編
【レシピ付き】魚の味噌幽庵焼き Vol.1 大阪『割鮮 入たに』の「明石のサワラ 味噌漬け」
大阪『割鮮 入たに』入谷元基さんに聞く【5問5答】
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