和インのマリアージュ

料理人のためのソムリエ試験対策 Vol.9 主要白ブドウ品種の特徴

ソムリエの松岡正浩さんから学ぶ「料理人のためのソムリエ試験対策」第9回目は、二次のテイスティングにおける主要白ブドウ品種5種について、「外観」「香り」「味わい」「ポイント」など、押さえておきたい特徴、見分けるコツについてお伺いしました。

文:松岡正浩 

目次

松岡正浩(「合同会社 まじめ2」代表 / 大阪・北新地『空心 伽藍堂』シェフソムリエ)

兵庫県出身。山形大学に進学後、県内のホテルに就職。東京『タテル ヨシノ 芝』にて本格的にフランス料理の世界に入り、その後、渡仏。『ステラ マリス』を経て、パリの日本料理店『あい田』ではシェフソムリエとして迎えられた。帰国後、和歌山『オテル・ド・ヨシノ』にて支配人兼ソムリエを務め、2016年、日本料理『柏屋』へ。こちらでも支配人兼ソムリエを務め、ワイン・日本酒を織り交ぜたペアリングコースを提案。レストランガイド「Gault&Millau(ゴ・エ・ミヨ)2021」にてベストソムリエ賞受賞。2022~23年、京都・御所東のフランス料理『Droit(ドロワ)』においてギャルソンとして勤務。23年6月より、大阪・北新地の中国料理『空心 伽藍堂』にてシェフソムリエを務める。

今回は二次のテイスティング対策として、「リースリング」「ソーヴィニヨン・ブラン」「シャルドネ」「甲州」、そして、2024年にも出題された「ミュスカデ」の特徴、ポイントを解説します。

リースリング

幾多の白ブドウ品種の中で最も高貴な特性を持ち、二次試験においてもシャルドネと並び出題頻度が高く、その重要性を如実に物語っています。ただ、人によっては特徴がつかみにくいこともあり、リースリングを理解できるかどうかが、白ワインを攻略する鍵となると私は考えております。

外観

色調は「黄色」を基本とし、無色に近い淡いものから、比較的深みのあるものまで産地や生産者によって違いが見られます。ただ、淡い外観に反して、粘性がしっかりしていることが多い点は特筆すべきポイントです。

香り

リンゴの蜜や白い花を思わせる優美な香り。樽由来のニュアンスとは無縁であり、果実と花の香りが主体となります。そして、リースリングを理解する上で避けて通れない香りが「石油香(ペトロール香)」という独特の個性。全てのリースリングにおいて必ず感じ取れるわけではないのですが、品種特定の重要な手がかりとして理解できるように努めましょう。

味わい

口当たりは滑らかで、果実味に富み、繊細でかつ芯の通った酸がワインにしっかりとした骨格を与えます。この酸が特徴的で、ソーヴィニヨン・ブランやミュスカデのようなキリッとした爽快感をもたらす酸ではなく、特有の落ち着いた質感を持ちます。また、余韻に柔らかい甘味を感じることが多い点にも注目です。

ポイント

リースリングらしい香りと、他の品種とは一線を画す酸の質感を体感できるよう繰り返しテイスティングに取り組むことが二次試験突破の鍵となります。

また、特にドイツ産のリースリングにおいて、果実や花の香りよりも「ミネラル」を前面に感じる品種特定の困難なタイプが存在します。これらを見極めるにはかなりの経験が必要であるため、「樽の風味なし」「際立つミネラル」のタイプと判断したなら、ブドウ品種の特定はあきらめ、テイスティングコメントで確実に得点を稼ぐ方向に舵を切りましょう。


ソーヴィニヨン・ブラン

外観、香り、味わいの全てにおいて「緑」「グリーン」のニュアンスを持ち、レモンやグレープフルーツに近いわかりやすい酸が特徴です。二次のテイスティングとしては比較的識別しやすいブドウ品種といえます。

外観

リースリングの黄色に対して、「グリーン」がかった輝きが特徴的。より冷涼なフランス産は淡い色調と軽やかな粘性を、一方、ニュージーランド産はやや濃いめの色調と存在感ある粘性を示すことが多いと言えます。とはいえ、ワイン造りの技術や気候変動の影響もあり、近年はこの両者の差異は徐々に曖昧になりつつあります。

香り

フランス産は、フレッシュハーブを刻んだ瞬間に立ち上る清々しい香りに、ほのかにマッチを擦った時のような硫黄のニュアンス、レモンやライムのような爽やかな柑橘の引き締まった香りが重なります。
対するニュージーランド産は、フレッシュハーブというよりは真夏の草原にいるような暑さを感じさせる「グリーン」な香りに加え、ワインによってはパッションフルーツを思わせるトロピカルな風味を持つものまで存在し、より温かみのある青さ、太い香りを持ちます。

味わい

鋭角に飛び込んでくる爽快感あふれる口当たりから清涼感のある酸味が伸びます。さらに、余韻に至る過程でシャープな酸とグレープフルーツを思わせる心地良い苦みが調和します。ニュージーランド産は果実の凝縮感が増し、酸がより穏やかになります。

ポイント

全てにおいて感じる「グリーン」のニュアンスと爽やかな酸がソーヴィニヨン・ブランを特定する重要な手がかりとなります。フランス産の引き締まった「キリリ」とした印象に対し、ニュージーランド産はより「華やか」で風味が豊かです。ともあれ、この「グリーン」のニュアンスを取りこぼさないことが何よりも大切です。


シャルドネ

世界中のあらゆる気候、産地において成果を出す「万能型」のブドウとして広く栽培されており、非常に高い人気を誇ります。二次試験の出題回数としても白ブドウ品種最多を数えます。

外観

淡い黄色から輝くような黄金色まで数多くのタイプが存在します。(樽に入れて熟成させることが多いため)どちらかといえば濃いめで「黄色」のニュアンスが強いことが特徴と言えます。

香り

ブドウ由来の特徴的な香りは控えめですが、しっかりとしたボリュームがあり、さまざまな香りがバランス良く感じられます。何よりも特筆すべきは、樽との相性が良いことで、樽由来のバニラやトーストと表現される香りが特徴と言えます。

味わい

果実の凝縮感、余韻にも感じる樽のニュアンスと心地良い苦味。マロラクティック発酵を行うケースが多いため、酸が穏やかになり全体的に丸みを感じます。これらのことからも、香りと同様に全体的なバランスの良さが味わいにも表れます。

地域による違い

フランス・ブルゴーニュ産は、酸、果実味、穏やかな樽のニュアンスのバランスに優れ、何かの要素が突出しているということが少なく、このトータル感が世界中のワイン愛好家から支持されています。
一方、アメリカ産(新世界産)はより温暖な気候を反映して、アプリコットなどの黄色い果実の凝縮感が増し、樽由来の甘いニュアンスがより強く感じられることが多く、その分、酸はより穏やかになります。

ポイント

ソムリエ試験的には「樽を感じたらシャルドネ」と考えましょう。今回、紹介した他の主要ブドウ品種には基本的に樽の風味はありません。とはいえ、シャルドネ以外で樽の風味を持つ白ワインが出題されることもあります。
ワインは樽に入れることで空気に触れ、角が取れて丸くなり、さまざまなバランスが取れるようになります。ある意味、没個性なのですが、雰囲気としてシャルドネに似たニュアンスになるため、「樽=シャルドネ」のルールに則り、シャルドネをイメージしてテイスティングコメントを選択すれば、十分合格ラインを狙えます。
このように想定することは試験本番において貴重な時間の短縮になります。さらに、誰もが緊張する場面で「一つわかった」という安心感を得ることにとても意味があると私は考えております。

一方で、近年、樽を使わないシャルドネ(シャブリなど)が時折出題されるようになりました。最初にお伝えしたようにシャルドネはこれと言った個性のない品種です。この樽なしタイプは潔く「ブドウ品種を当てる」ことはあきらめて、ミネラル系で穏やかなワイン(後述のミュスカデ)を想定しテイスティングコメントで得点を稼ぐことを意識しましょう。

シャルドネまとめ

ブドウ由来の香りが少なく、樽のニュアンスを感じます。また、香り、味わい共に、何かの要素が際立っているということが少なく、丸みがあり、バランスが取れていることが最大の特徴と言えます。


甲州とミュスカデ

この二つのブドウ品種は同じタイプで、似た性格を持ち、テイスティングコメントも共通点が多く見られます。

また、先ほどお伝えした、「白い花系の香りの少ないミネラル系リースリング」や「樽香のないシャルドネ」が、ミュスカデのテイスティングコメントと酷似するため、主要品種というわけではありませんが、甲州と合わせてミュスカデについてもふれておきます。

外観

両品種ともに他の主要白ブドウ品種と比較して圧倒的に淡く、軽やかな印象です。甲州は、果皮の色がワインの外観に反映されることがあり、わずかに「赤紫色」のニュアンスを呈することがあります(甲州の果皮は淡い紫色)。ただ、この色調を出さない生産者もいるため、絶対的な特徴とは言い切れません。また、ミュスカデにこの赤紫色のニュアンスはありません。

香り

香りも同様に個性が控えめで、ボリュームに欠けます。感じられる香りとしては、レモンなどの柑橘やハーブのニュアンスがほのかに存在する程度です。
違いとしては、ミュスカデは果実の香り以上にミネラルが際立つのに対し、甲州は日本酒の吟醸香を思わせる繊細で柔らかな香りに、丁子(クローブ)のようなスパイシーなニュアンスを持つことがあります。

味わい

ミュスカデは典型的なスッキリ系で、軽めの口当たりから引き締まった柑橘系の酸と塩味を思わせるミネラルを感じる余韻が特徴です。
一方、甲州はミュスカデと比較すると、穏やかで柔らかな酸とわずかな苦味が特徴となります。

ポイント

両品種共に明らかに単調で膨らみに乏しい印象です。糖度がそれほど上がらないブドウという特性が、ワインの性格にはっきりと表れます。試験では「控えめ」「淡さ」「軽さ」というポイントを見極めることが大切です。

ミュスカデは出題率的に想定しなくても問題ないのですが、頭のどこかに残っていることで、試験中に助けられることがあるかもしれません。

駆け足ですが、主要白ブドウ品種の特徴についてお伝えしました。主要黒ブドウ品種の特徴については次回以降、二回にわけてお伝えいたします。

▼料理人のためのソムリエ試験対策 他の回はコチラから

Vol.1 概要編
Vol.2 一次試験対策前にすべきこと
Vol.3 一次試験対策の準備と春先までの勉強法
Vol.4 一次試験対策、教本と過去問を利用した勉強法
Vol.5 二次試験対策の準備
Vol.6 二次試験対策として意識すべきワインについて
Vol.7 テイスティングして書き留める
Vol.8 ワインの酸とアルコール
Vol.10 主要黒ブドウ品種の特徴 その1
Vol.11 主要黒ブドウ品種の特徴 その2

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