【レシピ付き】料理屋のすり身vol.3数種のイカゲソを合わせて焼き物に
大阪らしい“始末の心”で仕立てる料理に定評のある『浪速割烹 和亨(わこう)』の杉本 亨さん。今回は、「割烹ではお出ししにくいイカのゲソやエンペラなどを活用してイカ真薯を作り、焼き物にしてみました」。油をかけながらフライパンで焼くと、イカ焼きのような香ばしさが会場に充満し、「懐かしい風味!」と会員は思わずほっこり。数種のイカの旨みを生かした、技ありのレシピをお届けします。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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杉本 亨さん(大阪・宗右衛門町|『浪速割烹 和亨』店主)
1970年生まれ。『浪速割烹 㐂川(きがわ)』で研鑽し、『天神坂上野』の創業メンバーとして活躍。恩師である上野修三氏の薫陶を受けて、1999年に独立。品書きに80種以上の単品料理を揃え、大阪流カウンター割烹としてのスタンスを守り続けている。穏やかな気性だが、探求心は旺盛。始末の心を大切にした柔軟な発想は、大阪料理会でも定評がある。
『浪速割烹 和亨』杉本 亨さん作
烏賊下足真丈焼 柚子胡椒餡
今回のお題が「すり身」と聞いて、まず思ったのは「大阪料理らしく、使うのに困る部分を活用しよう」ということでした。ペースト状にするので、お造りや焼き物などでお出しできない魚介の端身や頭の身なども使えますよね。
とはいえ、白身魚ではありきたりですから、今回はイカのゲソを使いました。美味しい部位ですが、庶民的すぎて割烹で使うのはちょっと難しい。どうしても余ってしまうんですね。椀種には合わないかなと思ったので、焼き物にしてみました。
数種のイカのゲソを使って深みを出す
イカは年中、何かしら手に入りますので、通年お出しできる一品だと思います。この料理のためだけにイカを仕入れることはないですから、余ったゲソをためておき、まとめてすり身にするといいですね。
今回は、紋甲イカ、剣先イカとアオリイカを使いました。イカは数種使った方が、味に深みが出ると思います。剣先イカは他の2種に比べて柔らかいので、粒に切って食感を添えてもいいかもしれません。ゲソだけでなく、エンペラや皮なども加えると、さらに旨みが強くなります。
ゲソやエンペラは硬いので、2時間ほど麹床に浸けてから使います。生臭みも取れて一石二鳥です。つなぎの卵白や山芋、浮き粉は少量にして、イカの持ち味を生かしたすり身にしました。
イカ焼きを思わせる、懐かしさも魅力に
イカの真薯地を丸く平らに成形したら、たっぷりの太白ゴマ油でフライパン焼きにします。この時、油をかけながら表面をカリッと焼き上げることがポイントです。
イメージは、イカ焼きです。大阪のソウルフードですよね。あの香ばしい香りは、イカならでは。どこか懐かしさのある大阪の味を、割烹の一品として仕立てました。
せっかくイカのゲソを使うので、ふんわり柔らかく…というのは、違うなと思って。ブリっと力強い弾力のある真薯にしています。
焼きレンコンと揚げショウガがアクセント
食感に加えたのは、焼いたレンコンと、揚げたショウガ。そのまま加えるより、香ばしさも出ますし、水分を飛ばしているので、よりガリッ、ポリッとした食感も際立つと思います。
以前、発表させていただいたスッポンおこげあんにも、素揚げしたショウガをあんに使いましたが、これがなかなかの優れもので(笑)。ショウガの風味や食感が際立つので、アクセントに加えるなら揚げた方が面白いと思います。
「焼いている時の香りが食欲をそそる」「大阪らしい懐かしい味」と大好評。シンプルな料理ゆえ、「イカの粒を残しても良かったのでは?」「白身魚のすり身と合わせたら、よりもっちり、しっとりと仕上がったのでは?」という意見も。畑 耕一郎会長は「食べていて楽しい。庶民的な料理だが、たまには割烹でこんな一品も食べたい」と総括した。
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