『おおさかもん料理 鮨 守屋』守屋栄一さん作 鯵の棒寿司 醤油麹ダレ

テーマ食材が旬のアジでしたので、寿司屋らしくシンプルに棒寿司にしました。うちでは、あまり押し寿司や棒寿司をお出しすることはないので、にぎりに使う小さめの平アジと、にぎり用のシャリで作りました。

大阪料理会に参加して、食材を余すところなく使い切る大切さを改めて感じたので、アジのアラを活用したいなと思って。知り合いが自家製の醤油麹を販売しているので、アジのアラだしで割ってタレにしてかけました。

熟成＋酢〆で、平アジの持ち味を深める

僕は大きなアジより小型の身質の方が好きなので、にぎりなら2カン分取れるくらいの20㎝大を選びました。棒寿司1本に1尾使っています。
京都の宮津で揚がった平アジで、小さいですが脂はしっかりのっています。

まず、頭と尾、ヒレなどを落として内臓を出します。腹を上にしてバットにのせ、ラップをかけずに冷蔵庫へ。冷風がよく当たるところで2～3日保存し、旨みを凝縮させます。
それから三枚におろし、きつめに塩を当てて10～15分、しっかりと塩を回します。純米酢に漬けるのは、15～20分ほど。ザルに上げたら、斜めにして自然に酢を切ります。アジの表面に染みた酢を中まで浸透させ、さらに全体に行き渡らせるため、冷蔵庫で2～3日は置きたいですね。

力強い旨みの純米酢で仕立てたシャリ

うちで使う酢はすべて、京都・宮津の『飯尾醸造』のものです。 シャリには、2年熟成の純米酢をベースに赤酢を含めた3種をブレンドして使っています。この赤酢は、蔵を訪ねてお願いし、分けていただけることになった10年熟成の希少なもの。旨みに奥行きがあって、ぐっと深みが出ます。

ですから、シャリの味は比較的強め。塩分や酸味が立っているというよりも、旨みが強い、という感じです。このシャリに負けないような仕事を、寿司ネタには施しています。

シャリには、黒ゴマと刻みショウガを加えました。棒寿司のシャリは、保存性を高めるために軽くこねて空気を抜きますが、その方がネタとの一体感も生まれると思います。

棒寿司は作ってから半日くらい置いた方が味がまとまって美味しいと思います。冷蔵庫だとシャリが硬くなってしまうので、弱冷くらいの温度で風もない状態がいいかなと思って、氷を敷き詰めた発砲スチロールで一晩寝かせました。

醤油麹にアジのアラだしを利かせて

今回は、アジのアラを活用したかったので、醤油麹と合わせてタレを作りました。
アジのアラは、軽く塩をして一晩置いてから炭火で焼いています。これを潮汁を作るような感覚で、水と昆布で煮出しています。

この醤油麹（下左）は、豆豉（トウチ）に似たコクのある風味で、粒感があるので滑らかにすり潰します。そこにアジのアラだしを加え、粉山椒で風味付けしました。
うちの店は堺にあるので、粉山椒は市内の老舗『やまつ辻󠄀田』のもの。風味が格段に違うんですよ！

醤油麹ダレが美味しい、面白いという声がある一方で、味の濃さを指摘する声も。畑 耕一郎会長やベテラン会員から、「山椒は粉ではなく、実を使った方が季節感が出て、風味も際立ったのでは？」「アジのアラを使いたかったら、素揚げにしてすり鉢で当たって、パウダーにしてかけるのも手」というアドバイスがあった。