ウィズコロナの食

並ばず、会わずに人気の餃子を購入できる『マルシン飯店』の自販機

“非接触”で食品を販売できる自動販売機にコロナ禍で注目が。京都では、餃子と天津飯が名物で行列ができる町中華『マルシン飯店』が冷凍餃子の自販機を設置して話題を呼んでいます。「実はコロナの前から計画してたことなんですけど、実行してみると思った以上にメリットがありました」と店主の前川流史郎さん。その詳細を伺いました。

文:泡☆盛子 / 撮影:竹中稔彦

「営業時間が半分になりましたから、売上も半減。いや、それどころじゃないかも」と苦笑いする二代目店主の前川流史郎さん。地元客と観光客で賑わうランチタイムから、仕事明けの飲食店関係者が集う明け方までの通し営業でも、席の空く間がないほどだったのが、夜の営業ができなくなり大打撃。さらに、餃子の卸し約50件も休止となってしまった。

それでも前川さんは名前の通り前を向き続けた。「その分時間に余裕ができたので、2年前から考えていた冷凍餃子の自販機設置に本腰を入れることにしたんです」。参考にしたのは、当時日本で唯一だった横浜の冷凍餃子自販機。現地へ赴き、オーナーに話を聞いてアイスの自販機を改造し利用していることを知る。ならば自分もそれを買っていざ、と思いきや、アイス用自販機の入手は予想以上に困難だった。ほぼ市場に出回らないのだという。

それでも諦めきれず、台湾の業者とやり取りを始めた矢先にコロナ騒動が勃発。計画は頓挫してしまう。しかしここで逆に光が見えた。日本の業者がコロナ禍を商機として食品用冷凍自販機の製造を始めたのだ。「『ど冷(ひ)えもん』ていうんですけどね。これでやっと販売に漕ぎ着けることができました」。

wit0008逕サ蜒十aマルシン飯店冷凍生餃子7個480円(ラー油入り酢醤油付き)、15個980円(ラー油入り酢醤油、酢こしょう付き)。自販機には保冷剤や袋は用意されていないので各自で準備を。

wit0008逕サ蜒十b『マルシン飯店』の餃子は、国産の豚肉や野菜、ニンニクのあんを、特注の皮で包んでいる。「冷凍餃子は中火で焼いて中までしっかりと火を通すのがコツです」と前川さん。

かくして、今年4月に岩倉、8月には上鳥羽で設置開始。これまでは通信販売でのみ扱っていた冷凍餃子が24時間いつでも買えるようになった。「店やったら並ばなあかんけど、ここでなら好きなときに買えるのが嬉しい」「マルシンさんの味や!」と早々に好評を博し、多い日は100食近く売れることも。この頃には関西でもスイーツやフレンチ惣菜、焼肉など多彩な自販機が登場し、それぞれに注目を集め始めた。

手応えを得た前川さんはさらに餃子以外の商品にも手を広げる。手始めに10月から岩倉で「天津飯の餡」を扱い始めるや、限定10食が即完売。これまでは天津飯そのものをテイクアウトするしかなかったところ、餡だけを買えるのは画期的だ。「天津麺の餡は、冷凍してもとろみをキープするように仕上げるまでが大変でした」と前川さん。「でもね、飲食店が自販機で食品を売るならスーパーでは買えないものを出さないと意味がないと思うので、そこは周りを巻き込んで頑張りましたよ」。

筆者も購入してみたが、ほぼ店と同じ味の天津飯を再現することができた。素人が家庭では作ることのできない本格的な餡は、冷凍庫に常備しておくと重宝すること請け合いだ。

wit0008逕サ蜒十c天津飯の餡400g×2袋480円も冷凍仕様。電子レンジで加熱した後、フライパンや鍋でふつふつとなるまで温めるだけで「あの、マルシンの味」が楽しめる。

前川さんは今後もさらなる展開を計画中だという。「中華料理店ならではの、ちょい足しするだけで本格的な『おうち中華』ができる自販機メニューを開発中です。加えて、京都市内の他エリアでの設置予定も複数あるとのこと。まだまだ非接触が望ましい状況ゆえに、この展開は吉報といえよう。

最後に、自販機を設置してみてどうだったかを伺った。
「ほんまにやってみてよかったです! 新たに店舗を作るよりもはるかに安価で人件費も不要。これはかなりありがたいですよね。さらに、自販機は京都府の屋外広告物条例に該当しないので思い切り派手にして宣伝効果も狙え、いいこと尽くしです。そしてなにより、店になかなか来られない方にもうちの餃子を召し上がってもらえるのは嬉しいですね」。

wit0008逕サ蜒十dwit0008逕サ蜒十e父が創業した店を継ぎ、人気メニューだった餃子をさらにパワーアップしたり熟成肉を使った餃子も販売したりと攻め続けている。本店の隣には生餃子専門の売店も併設。

マルシン飯店「冷凍生餃子の自動販売機」

岩倉●京都市左京区岩倉忠在地町511 ※電子マネー使用可。
上鳥羽●京都市南区上鳥羽大柳町16 ※現金のみ。

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