【レシピ付き】ニゴイを使った夏の和え物とお椀
コイに似ていることから「似鯉」と書く、ニゴイ。本州から四国と広い範囲で川や湖に生息していますが、一般的にはあまり流通していません。高槻の『心根』店主の片山 城(きずく)さんは、「うちは山の料理屋なので、淡水魚を主にお出ししています。今年から琵琶湖のニゴイを使い始めたのですが、とても食味がよくて驚きました!」と、今回テーマ食材に。キュウリの古漬けや香味野菜と合わせた美しい和え物と、ギリギリの火入れを狙った椀物を披露しました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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片山 城さん(大阪・高槻|『心根』店主)
1975年、大阪府交野(かたの)市生まれ。高校時代に「旅館をやりたい!」という夢を持ち、大学で法学を学ぶ。法律事務所に1年務めた後、「料理ができなアカン」と、『魚匠 銀平』など居酒屋や魚料理店で約10年修業を積み、2009年に枚方に『心根』を開店。そして2018年に大英断。高槻駅から車で30分の山間部に移転、古民家を改装し、リスタート。地元の山の幸を主とした“鄙(ひな)のもてなし”で人気を博す。
ニゴイとは?
今回は、『心根』片山さんの料理発表の前に、大阪料理会事務局の笹井良隆さんによる、ニゴイについてのプチ講座が行われました。ニゴイとはどんな魚なのか? 笹井さんの解説をご紹介します。
「ニゴイはコイ科の淡水魚ですが、コイとは別種。魚体は筒長状、顔が尖っているのが特徴で、コイと容易に見分けがつきます。とりわけ食味がいいとされるのは琵琶湖産で、大正期の『琵琶湖水産史』には、刺身にするとすこぶる美味しいと書かれています。
琵琶湖のニゴイは、5~7月の夕刻から深夜に砂地で産卵し、4年経つと体長は40cmを超えて成魚になります。地元ではマジカと呼ばれ、旬は春から夏。鮮度が落ちるのが極端に早く、琵琶湖産でも京都に着くまでに状態が悪くなるため、“京知らず”と言われていました」。
『心根』片山 城さん作
似鯉の和え造りと、似鯉とオクラの椀
足が早いとされるニゴイですが、今は琵琶湖の漁師さんが活け越しし、神経締めをしたものを送ってくれるので、うちのような高槻の山の料理屋であっても、鮮度を保ったまま届きます。
そのニゴイを、うちで「津本式※」で血抜きしています。毛細血管に至るまで水圧で体内の血を抜くので、臭みがなく、繊細な白身の味が楽しめると思います。
※津本式:“究極の血抜き”と呼ばれるテクニック。エラと尾の部分を切り、専用のノズルとホースを使って水を通すことで脱血する独自の方法。
今は海の魚がどんどん高騰しています。昔は臭みが気になると敬遠された川魚や湖魚も、若いお客さんには馴染みがないため、新しい食材として受け入れてもらえるのでは?と思います。街中の料理屋さんにもぜひ取り入れていただけたらと、今回テーマ食材に選びました。
キュウリの古漬けと香味野菜で夏らしい和え物に
しっかりと血抜きしたニゴイのきれいな持ち味を、まずは生で楽しんでいただこうと思います。お造りでもいいのですが、僕は「二口目が想像できる料理」があまり好きではなくて(笑)。味わいも食感も単調にならないように和え物に仕立てました。
今回は、脂ののった1㎏以上のニゴイを使いました。身は、皮目に熾(おこ)した炭を押し付けて、香ばしく焼き霜に。しっかりとしたウロコがあるので、これを低温でじっくり揚げて、食感のポイントに加えています。
さらに、キュウリの古漬けで塩味と発酵による旨みを、割り醤油に一晩浸した岩茸で独特の香味を添えています。見た目と食感のバランスを考えて、紫と白の辛味大根を鬼おろしにして加え、全体をしっかり混ぜ合わせて食べていただきます。
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