【レシピ付き】パイ豚の煮凝り——『淺井東迎』東迎高清さん作
8月末にはミナミで16年営んだ『淺井東迎』を閉め、故郷の沖縄に帰るという東迎高清(こうせい)さん。大阪料理会では、沖縄の食材や料理を用いて割烹の一品を仕立てる名手として尊敬を集めていました。今回は、最後の発表とあって、なんと豚の顔をテーマ食材に。耳・顔皮・ノド肉をそれぞれ相性のいい野菜と合わせ、三種三様の煮凝(にこご)りに。手間を惜しまず、創意工夫を凝らし、だしの利いた品のいい味わいに仕上げた東迎流で有終の美を飾りました。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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東迎高清さん(大阪・心斎橋|『淺井東迎』店主)
1959年、沖縄県与那国(よなぐに)島生まれ。高校卒業後、大阪・心斎橋の『㐂川(きがわ) 淺井』にて修業を始め、2008年、そのまま店を引き継ぐ形で独立。『おおさか料理 淺井東迎』と屋号を改める。長きにわたって学んだ大阪料理に、故郷・沖縄の味も取り入れた、独自の割烹スタイル。大阪料理会でも、積極的に地元の食材や調理法を紹介し、会員の興味を誘っている。
パイ豚のノド肉・顔皮・耳を煮凝りにし、食べ比べしていただく趣向です
私の生まれ育った沖縄には、豚食文化が根付いています。「鳴き声以外はすべて食べる」と言われてましてね。豚の顔も市場にずらーっと並んでいます。私はパイ豚(とん)を愛用していて、大阪料理会でも以前、スーチカ―をご紹介しました。今回は、そのパイ豚の顔周りの肉を使っています。
生産者さんから直接送ってもらったので、うちに届いたのは毛が付いたままの豚の顔。バーナーでその毛を焼き切って、霜降りした後、庖丁で掃除しています。ミミガー(耳)、チラガー(顔皮)、ノド肉を切り分けて使うのですが、皆さんは下処理済みのものを仕入れていただけたらいいと思います。
3つの部位は、味わいも食感も違います。沖縄では、それぞれの特徴を生かした食べ方をしますが、今回は初夏らしく煮凝りにして、個性の違いを食べ比べてもらおうと考えました。牛スジに似たノド肉にはレンコンで食感を添え、チラガーはゴボウと山椒オイルで風味を補っています。コリコリのミミガーはネギと甘酢漬けのミョウガを合わせて煮凝りにし、ポン酢のジュレを中に入れました。
左がノド肉。顔皮の内側の部位で、サシが入っていて柔らかい。右はチラガーとミミガー。チラガーは顔の皮。鼻の部分はハナブクと呼ぶ。ミミガーは軟骨のコリコリ感が特徴的。「沖縄では、ノド肉は味噌煮、チラガーやミミガーは味噌和えにすることが多いですね」と東迎さん。
3つの部位は一緒に水から茹でこぼすこと2回。その後、30分ほど茹でます。これをカツオ昆布だしで串がすっと通るまで煮たら下処理は終わりです。この時の煮汁は豚だしとして使えるので、取っておいてください。
この豚だしとカツオ昆布だしを合わせ、淡口醤油と砂糖で味を付けたものを煮凝りのベースとしています。3つの部位をそれぞれ炊いて火を通し、味が決まればゼラチンを溶かし入れ、冷やし固めるという手順です。味が足りなければ、淡口醤油と砂糖で調整してくださいね。
沖縄そばも、カツオ昆布だしに豚や鶏のだしを合わせて使います。そこからの発想もあって、今回の煮凝りにもたっぷりとカツオ昆布だしを利かせています。割烹の一品として仕立てましたので、大阪料理会の皆さんの参考になれば、と思います。
「3つの部位の味や食感の違いがよく分かり、野菜との相性も良かった」「煮凝りの芯にポン酢のジュレを入れる発想が新鮮で、参考になった」という意見が多かった。畑 耕一郎会長は、「豚のノド肉やチラガーなど馴染みのない食材を使ってはいるが、創意工夫をもって、きっちり大阪の料理に仕上げているところが素晴らしい」と締めくくった。
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