【レシピ付き】オオズワイガニすり流し——『旬菜 喜いち』板倉誠司さん作
昨年から北海道で異常発生しているというオオズワイガニ。1パイ400g前後のものが大阪にも出回るようになりました。大量に網に入るため、他の魚介が獲れなくなり、漁師を悩ませる厄介者のようですが、「身が詰まっていて、カニミソもたっぷり入っている美味しいカニなんですよ」と『旬菜 喜いち』の板倉誠司さん。安価なのも魅力だと話し、今回テーマ食材に。カニミソで豆腐を作り、身をすり流しにした、オオズワイガニづくしの冷製仕立てです。
※大阪料理会 公式サイトhttps://osakaryourikai.com/
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板倉誠司さん(大阪・東大阪『旬菜 喜いち』店主)
1972年、大阪府東大阪市生まれ。調理師専門学校卒業後、大阪府内や奈良の割烹、和食店で修業し、2008年に独立。地元に『旬菜 喜いち』を開く。大阪の郊外で地域のお客様に愛される和食を目指し、親しみやすさの中に独自の工夫を凝らす。その真面目な仕事ぶりは、大阪料理会の会員も認めるところだ。
カニミソでわらび餅のような豆腐を作り、身をすり流しにしてかけました
実は、最初に考えていたのは、大阪湾で揚がるトビアラなどのジャコ(小エビ)を使ったエビミソ豆腐でした。殻でだしを取り、身をすり流しにしてかけようと思っていたのですが…。今年はジャコがとても高いんですよ。
そこで、大阪の市場でよく見かけるようになったオオズワイガニに目を付けました。昨年から北海道の漁場で大量に揚がるようになったそうです。ほぼ年中獲れるらしく、ボタンエビやカレイなどの代わりに網に入って、漁師を悩ませていると聞きます。
本来はズワイガニより大型になるようですが、大阪に出回るオオズワイガニは小型なんですよ。今回仕入れたものは1パイ400g前後でした。小さいので、あまり売れないそうですが、味はよく、なんせ安価。身入りもよく、カニミソもパンパンに入っているんですよ。
初夏にズワイガニを使うのは季節外れなのですが、捨てられてしまうのはもったいないと思うんです。そこで今回、テーマ食材に選びました。
まずは、塩茹でしてザルに上げ、熱いうちにラップをして軽く蒸らします。こうすると、身が取り出しやすいんです。茹でる際に海水を少し使うのですが、塩気が強くならないよう気を付けています。
少しの身と昆布だし・吉野葛を合わせ、中火にかけて30分くらい煉ります。柔らかめのゴマ豆腐くらいになったら、カニミソを混ぜて流し缶に入れ、氷水に当てて冷やし固めました。カニミソは風味が飛ぶので、最後に加えるのがポイントです。
カニミソに脂分があるせいか、固まりにくくて…。逆にその特性を生かして、わらび餅のような柔らかい豆腐に仕立てました。カニの持ち味を生かしたかったので、塩で少し味を補う程度にしています。これを、スプーンですくって盛り付けました。
足の身はあしらいに使うので、残りを昆布だしとミキサーにかけて、すり流しに。カニのガラでだしを取って加えたかったのですが、それほどいいだしが取れなかったので、昆布だしを使っています。このすり流しを先ほどのカニミソ豆腐にかけ、花山椒を軽く手で潰して香りを立たせて添えました。
「食材としては季節外れだけど、冷製にしたのが面白い。海の事情が変わりつつある今、こういう提案もいいと思う」という意見が多かった。カニガラでだしを取る方法については、ベテラン会員から「焼いてから煮出すと香りのいいだしが取れる」という助言も。「カニを生で使うと、もっと風味が際立ったのでは?」「北海道のカニは茹でるより、蒸した方が風味がいい」という意見も聞かれた。
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