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【レシピ付き】福島を味わう懐石vol.2向付・お椀

魚介の宝庫でもある福島県では、近年、水産物のブランド化が進んでいます。いわき市で揚がる魚介は「いわき常磐(じょうばん)もの」として売り出され、相馬(そうま)市の天然トラフグ「福とら」も認知度が上がっています。復興庁の情報発信事業の一環として、日本料理アカデミーを中心に福島県内外の料理人が協力して考案したオリジナル懐石料理のレシピをお届けする「福島を味わう懐石」。vol.2では、福島県が誇る海の幸と会津地鶏の卵を使った向付とお椀をご紹介します。


※復興庁公式サイト「福島の今」内「福島を味わう 食文化の結びPROJECT in福島

文:中本由美子 / 撮影:綿貫淳弥

目次

鈴木謙一郎さん(愛知・名古屋『可(か)ん寅(とら)』店主)

昭和42年、愛知県名古屋市生まれ。名古屋初のフグ料理店として昭和9年に開店した『可ん寅』四代目。「名古屋芽生(めばえ)会」に所属し、平成29~30年、「全国芽生会連合会」理事長を務める。今回の食イベントでは、100名分のフグを薄造りに仕立てた。

荒木裕一朗さん(京都・伏見『魚三楼(うおさぶろう)』若主人)

平成2年生まれ。立命館大学を卒業後、プロのアメフト選手として活躍。実家に戻り、江戸期の明和元(1764)年創業の老舗『魚三楼』十代目に。「京都料理芽生会」所属。今回のイベントではお椀担当として、懐石に使う大量のだしを引いた。

常磐ものの持ち味を深めたお造り2種盛り

常磐もの「福とら」糀漬け 常磐もの鮃昆布締め常磐もの「福とら」糀漬け 常磐もの鮃昆布締め。調理担当:『可ん寅』鈴木謙一郎さん、宮城・石巻『割烹 滝川』阿部 司さん、新潟市『日本料理 行形亭(いきなりや)』行形和滋さん。

常陸(ひたち ※現在の茨城県)と磐城(いわき ※現在の福島県)の沿岸海域で獲れる魚介類は、長らく「常磐もの」として築地市場で高く評価されてきた。

震災後、福島県いわき市では、市内で水揚げされた魚介を「いわき常磐もの」としてブランド化。いわきの海は、ちょうど黒潮と親潮がぶつかる場所だという。栄養塩が豊富な親潮はプランクトンが豊富なため、黒潮にのって北上してきた魚が大きく育つのだ。

特に、通年水揚げされるヒラメは、魚体が大きく身が肥えていると評判。今回は、脂ののった身の味を少し凝縮させ、ほんのり昆布の香りをまとわせるよう、サクのまま1時間だけ昆布で押している。

「福とら」は、県北部の相馬市の新名物。近年、相馬沖では天然トラフグが豊漁で、その中でも、はえ縄漁で獲れた体長35㎝以上の天然トラフグだけを「福とら」と呼ぶ。
名古屋のフグ料理の名店『可ん寅』の鈴木さんは、「今回は100名分必要なので冷凍ものを使ったのですが、そうとは思えないほど身がしまっていて、質が高かった」と話す。

冷凍ものを造りにするため、「福とら」はあえて糀漬けに。一晩かけて、糀の風味をまとわせ、フグの持ち味も凝縮させている。

福島県産の魚介この日の懐石料理で使用した福島県産の魚介類。手前から時計回りに、アカムツ、阿武隈(あぶくま)川メイプルサーモン、滝根町産「福うなぎ」、「常磐もの」のヒラメ(奥)、「福とら」(右)、相馬産北寄貝。真ん中は「常磐もの」の白魚。

常磐もの「福とら」糀漬け 常磐もの鮃昆布締めのレシピ

【材料】

常磐もの「福とら」(冷凍)……700g
糀床(塩糀と甘酒を1:3で合わせたもの)……適量
常磐もの「ヒラメ」……1尾(2㎏)
昆布(昆布締め用)……2枚
塩……適量
ポン酢※……適量
もみじおろし……適量
大葉・赤ジソ・芽ネギ……各適量

※ポン酢の作り方
濃口醤油とスダチ果汁を同割にし、その1割の本みりん(愛知県『九重味醂』)・だし昆布を合わせ、1週間置いて味をなじませる。

【作り方】

<「福とら」を糀漬けにする>

常磐もの「福とら」を解凍する。大名おろしにし、表面の薄皮(身皮)を引く。身皮は取っておくこと。
糀床に①を漬け、冷蔵庫で一晩置く。

「福とら」糀漬け

<ヒラメを昆布〆にする>

常磐もの「ヒラメ」は三枚におろし、皮を引いて上身にする。薄塩をし、一晩置いておく。
昆布をぬれ布巾でさっと拭き、③を挟んで1時間、昆布〆にする。

常磐ものヒラメの昆布〆

<仕上げる>

①の身皮を食べやすい大きさに切り、さっと茹でて氷水に落とし、湯引きにする。
②を糀床から上げて糀を軽く拭き取る。薄造りにして皿に盛る。
④をそぎ切りにし、⑤と共に⑥に盛り合わせる。大葉・赤ジソ・芽ネギ・もみじおろしをあしらい、ポン酢を添える。

会津地鶏の卵で仕立てた濃厚な玉子豆腐と春を告げる白魚のお椀

福島食材を使ったオリジナル懐石料理のお椀常磐もの白魚 会津地鶏の卵を使った玉子豆腐 短冊大根人参 うぐいす菜 木の芽。調理担当:『魚三楼』荒木裕一朗さん。

ブロイラーの倍の約100~140日、平飼いで飼育する会津地鶏は、通常の鶏の半分ほどしか卵を産まないため、濃厚でコクが豊か。その卵を使って玉子豆腐を仕立てた京都・伏見『魚三楼』の荒木さんは、「オレンジに近い鮮やかな色になって、食べ応えが出ました」と驚いた様子。

一番だしと合わせ、薄口醤油とみりんで味を付け、蒸し上げた後、しっとり仕上がるよう、だしを注ぎ入れて常温でゆっくりと冷ましている。

春告げ魚といわれる白魚は、いわき市で1~3月、船曳(ふなびき)網漁で獲れる「常磐もの」を使用。イシカワシラウオという種類で、姿形が立派だ。
2%の塩水に浸けて洗い、塩水を変えて浸けた後、5~6本束ねる。酒で洗って蒸すことで、軽い酒蒸しの状態にしている。

『魚三楼』では、一番だしを一升(1.8ℓ)引くのに、60gのカツオ節を使用。カツオ節が華やかに香るだしに、塩水と薄口醤油でわずかに味を付け、吸い地としている。

常磐もの白魚 会津地鶏の卵を使った玉子豆腐 短冊大根人参 うぐいす菜 木の芽のレシピ

【材料】

●会津地鶏の卵を使った玉子豆腐
|溶き卵(会津地鶏の卵)……500㎖
|一番だし……500㎖
|薄口醤油……50㎖
|みりん……25㎖
●白魚の酒蒸し
|常磐もの「白魚」……適量
|塩水(塩分濃度2%)・酒……各適量
●短冊大根人参
|大根……1/3本
|金時ニンジン……約2本
|二番だし……2ℓ
|薄口醤油……100㎖
●うぐいす菜の八方地浸し
|うぐいす菜……適量
|浸け地※……適量
※浸け地:二番だしを1.8ℓ・薄口醤油100㎖・みりん100㎖を合わせてひと煮立ちさせ、追いガツオをして火を止める。カツオ節が沈んだら漉す。
●吸い地
|一番だし……適量
|塩水(塩分濃度20%)・薄口醤油……各適量
塩……適量
木の芽……適宜

【作り方】

<会津地鶏の卵を使った玉子豆腐を作る>

玉子豆腐の材料をしっかりと混ぜ合わせて漉す。
流し缶に①を流し入れてラップをする。スチームコンベクションオーブンを90℃に設定し、20~23分蒸す。
熱いうちに二番だし(分量外)を注ぎ入れ、常温で冷ます。

会津地鶏の卵を使った玉子豆腐

<白魚を酒蒸しにする>

常磐もの「白魚」は2%の塩水で洗い、塩水を変えて5分ほど浸ける。
酒に④をくぐらせ、クッキングシートに5~6本ずつ束にして並べる。スチームコンベクションオーブンを90℃に設定し、6~7分蒸す。

白魚を酒蒸しにする

<短冊大根人参を作る>

大根と金時ニンジンは短冊切りにし、それぞれ食感が残るように茹でる。
二番だしを沸かし、薄口醤油で味を付けたところに⑥の大根を入れ、ひと煮立ちさせる。煮汁に浸したまま冷ます。ニンジンも同様にする。

ニンジンと大根を煮る

<うぐいす菜を八方地浸しにする>

うぐいす菜はカブの皮をむき、形を揃える。さっと塩茹でし、冷水に取って急冷する。
⑧の水気をしっかりと切り、浸け地に1時間浸ける。

<仕上げる>

一番だしに塩水と薄口醤油で味を付け、吸い地とする。
玉子豆腐を切り出してお椀に盛り、⑤、⑦、⑨を添える、⑩を注ぎ入れ、木の芽をあしらう。

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