×川淵直樹vol.1 プリミティブな土器にも通じる、土味そのままの南蛮焼
「土味は力強く、ワイルド。でも、決して粗野でなく、そこはとない品を感じます」。京都の南部で作陶する川淵直樹さんの南蛮焼に魅せられた『神楽坂 石かわ』店主の石川秀樹さんは、やきものを育てる楽しみも、川淵さんの作品で知ったと言います。“うちの子”に育て上げた南蛮焼のうつわに、暑さを静めてくれる夏の涼を盛ります。
ワイルドな土味を“うちの子”に育てる楽しみ
川淵直樹さんの作品に出逢ったのは、まだ、店を始める前のこと。もう25年前になるでしょうか。東京・西麻布のギャラリー『桃居(とうきょ)』で見たのが最初です。粉引や刷毛目など、幅広い作風が並んでいたのですが、僕が心惹かれたのは南蛮焼でした。
土味は力強くワイルドなのに、粗野でなく、そこはかとない品も感じる。土の風合いが信楽や伊賀、備前などとも違って、初めて見る質感でした。出合った瞬間、「何だコレ!?」と思って、店主の広瀬一郎さんに尋ねたのを憶えています。
石川さんが愛用している川淵さんの作品。左下より時計周りに、南蛮四方皿、焼き締め瓷器(じき)鉢、南蛮鉦鉢(どらばち)、南蛮長方皿、南蛮鉢。
川淵さんの南蛮焼を知ってからは、ひと目見て川淵さんの作品だと分かるようになりました。うつわの中心近くに愛らしい牡丹餅(ぼたもち ※1)の丸が浮いて、黒い斑点が細かく散っているからです。
うつわが“育つ”という感覚を肌で感じることができるのも、川淵さんの南蛮焼を使い続ける楽しみの一つです。だんだんと土味がまろやかになって、しっとりとなじんでくる。使い手としては“うちの子”になってくれたようで、愛着が湧きます。
※1牡丹餅:ハマ跡とも呼ぶ。作品を重ねて焼く際、作品同士の熔着を防ぐために窯道具のハマを置いた跡。その部分だけ色が変わる。
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