和食のいろは

大阪『魚菜処 光悦』の自家製イカの塩辛レシピvol.1

塩辛は、魚介のワタ(肝)や卵、身を塩漬けにし、発酵させたもの。定番はイカの塩辛で、とても手軽に自家製できます。保存食のイメージが強いですが、自家製の場合は冷蔵で10日、冷凍でも1カ月くらいが賞味期限の目安。大阪・心斎橋で20余年、魚介一筋に商う『魚菜(さかな)処 光悦』の店主・原田 実さんは、「新鮮なイカのフレッシュ感を生かすなら、2~3日が食べ頃」と言います。自由で、簡単で、汎用性の高い『光悦』流・3種のイカの塩辛を、2回に分けて教えていただきます。vol.1では、春先までが旬というモンゴイカの塩辛レシピをご紹介します。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

季節のイカでバリエーションも豊富に

イカは年中手に入りますが、ざっくり分けると、冬場はコウイカ系、春から夏はヤリイカ系。スルメイカ系(アカイカ系)は、ほぼ通年出回ります。

コウイカ系は、舟形の石灰質の甲を持つことが名の由来。墨をたくさん吐くので「スミイカ」、地方によっては「ハリイカ」とも呼ばれますが、一般的に知られるのは「モンゴ(紋甲)イカ」ですね。

ヤリイカ系は、身体が細長いのが特徴。アオリイカや剣先イカなど、高価なイカがこの種類に含まれます。
庶民派の代表はスルメイカで、最も漁獲が多く、お値段も手ごろ。胴が長く、濃い赤褐色です。

僕は、一年中、ほぼすべてのイカで塩辛を作ります。種類によって、肝や身の味が違うし、食感も様々。特に、身が肥えて、肝も大きくなってきた頃が狙い目です。冬から春先までは、モンゴイカ。2㎏越えの立派なサイズが手に入りますよ。

モンゴイカこの日は2.2㎏のモンゴイカが入荷。肝もたっぷり入っている。

新鮮なら2~3日が食べ頃

塩辛とは、魚介の内臓や卵、身を塩蔵した保存食。置いておくと魚介の持つ酵素などで発酵すると言われます。

でも、料理屋としては新鮮な魚介が手に入るので、美味しいうちに食べてもらいたい。発酵による旨みがあるのは分かりますが、作りたての美味しさというのもあるでしょう。

うちでは、イカの塩辛は仕込んで2~3日くらいでお出しします。こまめに作るので、長く保存することはないですね。

モンゴイカの塩辛の作り方

モンゴイカの肝は色が淡くて、味もマイルドです。
肝を取り出したら裏漉しすると丁寧ですが、僕は食感が少し残っている方がいいと思うので、調味料と叩き合わせるだけ。身と和えたら、1日置いて完成です。磯の香りやワタのクセが落ち着いて、まろやかになりますよ。

イカは捨てるところのない魚介。皮や切り落とした端の身は、ざっくり刻んで、淡口醤油と酒・みりんで軽く炊いてから、煮汁ごと加えて炊いて、「イカごはん」にすると美味しいですね。

【作り方】
<モンゴイカをさばく>
① モンゴイカの背と、甲の周りに切り込みを入れる。
モンゴイカをさばく
② 甲を取り出し、そっと墨袋を引っ張って取る。墨がはじけ出ることがあるので、まな板ではなく、シンクの中で行うとよい。
モンゴイカの甲と墨袋を出す
③ 内臓の部分を掴み、引っ張って外す。口の下に庖丁を入れ、足を切り離す。
モンゴイカの内臓を出す
④ 胴の先端の身と皮の間に指を入れ、少しずつ動かして外皮を1/4程度はがす。
モンゴイカの外皮をはぐ
⑤ そのまま外皮を引っ張る。両端を切って形を整える。胴の下あたりにコブのような硬い部分があるので切り取る。
モンゴイカの外皮をはぎ、コブを取る
⑥ 胴の下から1㎝上に庖丁を平行に入れ、裏返して背側の薄皮を引く。
モンゴイカの薄皮をはがす
⑦ 腹側の薄皮もはがす。きれいにはがれない時は、金串を薄皮の下に入れ、そのまま動かして皮を引くとよい。
モンゴイカの薄皮のはがし方
<肝ダレを作る>
⑧ 内臓の中から肝を取り出す。庖丁でこそげ取るとよい。
モンゴイカの肝を出す
⑨ 軽く塩を振り、酒を適宜かける。濃口醤油を好みで加え、庖丁で叩きながら調味料をしっかりとなじませる。
モンゴイカの肝ダレを作る
<塩辛を仕上げる>
⑩ ボウルに⑨を入れ、好みの大きさに切った⑦の身を和え、1日置く。
モンゴイカの塩辛

大阪・心斎橋『魚菜処 光悦』店主・原田実さん名産地のアワビやクエから珍魚まで、20年来の付き合いの鮮魚店から仕入れるピカイチの魚介を、シンプルながらアイデアのある料理に仕立て、コースで楽しませる『魚菜処 光悦』。店主・原田 実さんは、1970年、大阪府生まれ。『船場𠮷兆』(閉店)にて日本料理を学び、大阪市内の割烹などで料理長を経て、2001年、同店の店長になる。3年後、独立し、店主に。2018年、東心斎橋に『天ぷら 悦』を開店。

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