【一覧表付き】冬(1~2月)が旬の野菜
寒さで凍らないよう、細胞に糖を蓄積するのが冬野菜の特徴。甘いと感じる野菜がこの時季に増えるのはそのためです。そんな冬野菜を選ぶポイントや風味を生かす調理法を、「辻󠄀調理師専門学校」日本料理主任教授を務めた畑 耕一郎先生と、創業40年の北新地の名割烹『味菜(あじさい)』店主・坂本 晋さんに解説いただきます。旬の食材一覧表も付いてますので、献立を考える際などに、ぜひご活用ください。
畑 耕一郎(はた こういちろう):大阪生まれ。「辻󠄀調理師専門学校」理事・技術顧問。「大阪料理会」会長。TBS「料理天国」やABC「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」など多くのTV番組に出演。『プロのためのわかりやすい日本料理』(柴田書店)など著書も多数。
坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。
2023.01.18配信記事を更新
冬(1~2月)に旬を迎える野菜の特徴とは?
この時季は白菜や大根、白ネギなど、白っぽい野菜が美味しくなります。加えて、ホウレンソウや小松菜など味の濃い葉物も本来は冬が旬。今や1年を通して栽培されていますが、冬に収穫するものの方が含まれる栄養素も多く、風味も豊かです。
葉物から根菜まで、バラエティに富んだ野菜が出回るのもこの時季の特徴。また近年は、収穫間近の葉物をあえて寒風にさらすことで糖度やビタミン類の含有量を上昇させる“寒じめ”という手法も盛んになっています。
冬(1~2月)が旬の野菜一覧
名前(カタカナ) | 漢字表記 | 別名または同種 |
葉菜類 | ||
---|---|---|
マナ | 真菜 | クジョウイモ(九条芋) |
ミズナ | 水菜 | キョウナ(京菜)、ヒイラギナ(柊菜)、センスジナ(千筋菜)、センボンナ(千本菜)、センスジキョウナ(千筋京菜)、イトナ(糸菜) |
ホウレンソウ | 法蓮草、鳳蓮草 | |
コマツナ | 小松菜 | |
ミブナ | 壬生菜 | |
ノザワナ | 野沢菜 | シンシュウナ(信州菜) |
ハクサイ | 白菜 | |
シロネギ | 白葱 | ナガネギ(長葱)、フトネギ(太葱) |
セリ | 芹 | |
根菜類 | ||
キントキニンジン | 金時人参 | キョウニンジン(京人参) |
ダイコン | 大根 | スズシロ(涼白/清白)、オオネ(大根) |
クワイ | 慈姑 | タグサ(田草)、エンビソウ(燕尾草)、クワエ |
香味野菜 | ||
ワサビ | 山葵 |
伝統野菜として知られる真菜(マナ)
野沢菜や小松菜の仲間である真菜は、大根葉のような形をしています。繊維が少ないにも関わらず、煮くずれしにくいことから、煮てよし、炒めてよし。油との相性もよい葉物です。また、お雑煮の青味として使う地域もあるようです。
奈良県で古くから栽培されてきた野菜でもあることから、2005年に「大和の伝統野菜」として大和まなが認定されました。大阪府豊能(とよの)町の南東に位置する高山地区でも300年以上前から栽培されており、高山まなは「なにわの伝統野菜」にも数えられています。
カロテン、カルシウムなどを豊富に含有し、栄養価も優れています。
真菜の選び方
葉の緑色が鮮やかで濃く、みずみずしいものが新鮮です。茎は、和え物やお浸しに向く細いもの、炒め物や漬物に向く平たいものなどがあるので、形に合わせて使い分けると良いでしょう。
保存は、乾燥しないようにキッチンペーパーなどで包み、冷蔵庫の野菜室に立てて入れます。硬めに茹でて冷凍することも可能です。
サッと湯通しすると、きれいな色に
真菜は気温が低くなると甘みがぐっと増します。つぼみが付いたものはほろ苦さも加わり、お浸しなどにも向きます。
「茎の太いものはサッと湯通しするだけでは硬さが残るので、油通しすることをおすすめします。120℃くらいに熱した油に茎を入れて火を通し、最後に葉も加えてすぐに引き上げます。その後湯通しすれば、油抜きになります。加熱時間が短くて済むので色鮮やかに仕上がりますし、持ち味も残るんですよ」(畑先生)。
「合わせだしで煮るのも良いですね。薄揚げ、イカや赤貝、イイダコなどの魚介と炊くのも美味しいです。湯がいてから酢味噌和えにするのもおすすめです」(坂本さん)。
『味菜』の「真菜の炒め煮のとろろがけ」。豚バラ肉を軽く炒めたところに塩茹でした高山まなを入れ、八方だしと塩・みりん・薄口醤油を加えて「ちょっと濃いめのお浸し」の塩梅に。最後にとろろをのせて、混ぜていただく。
おせち料理だけではない、クワイ
中国原産の水生植物。食用にしているのは主に中国と日本で、中国産は白クワイ、日本産は青っぽく、青クワイや吹田クワイと呼び分けられています。
焼売の具によく使われる中国産はシャキシャキした食感。一方、日本産はホクホク。勢いよく芽が出る様子が縁起良いと、おせち料理に使われます。
9月頃から収穫が始まり、春先まで続きます。正月用品としての需要が高まる時季は価格が高くなりがち。そのかわり、年明けはリーズナブルになります。
関西の名産地は大阪府の吹田(すいた)市。一般的に出回っているものより小ぶりで甘みの強い品種が栽培されています。全国的には埼玉県越谷市と広島県福山市が有名で、全生産量の約90%を占めています。
主な成分は炭水化物。そして、ナトリウムの排出を促してくれるカリウムを多く含みます。
クワイの選び方
芽がポイントで、ハリがあるものを選びましょう。収穫してから時間が経つとしんなりしてきます。丸く膨らんだ塊茎(かいけい)と呼ばれる部分も硬くてツヤがあるものの方が新鮮です。
大きさはマチマチですが、おせち向きの小ぶりサイズは価格が高め。お得感のある大きめサイズの方がお手頃です。
油との相性が抜群
おせちに詰められている含め煮を食べて苦手と思っている方にぜひ作ってほしいのが、クワイチップス。「大きめのクワイを皮付きのままスライス。水に短時間さらして水気をふき取り、低温の油でカリッとなるまでじっくり揚げます。味付けは塩、山椒塩や柚子塩も合います。ビールのおつまみに最高ですし、ウチの孫たちも大好物。クワイの新しい魅力が発見できると思います」(畑先生)。
「唐揚げや天ぷらにするのも美味しいですね。とにかく油との相性が良い野菜だと思います。クワイチップスをステーキの付合せにするのもいいですね」(坂本さん)。
大きなクワイは皮付きのまま薄切りにし、小さなものは下部のみ切り落とし、カラリと揚げる。チップスは塩と、好みで山椒や黒七味、カレー粉をまぶす。小さなクワイは淡雪塩(米粉と塩を合わせてシート状にし、粉砕したもの)をかける。
みずみずしさが際立つ、真冬の大根
七草粥の食材として知られるスズシロは、大根のこと。すがすがしく白いことからスズシロ(涼白/清白)の名が付いたと言われています。
実は、大根を世界中で最も食べているのは日本人。調理法も煮物に漬物、サラダ、薬味と多彩で、祭礼やお供えにも使われる、馴染みの深い野菜です。
1年を通して市場に出回りますが、みずみずしさが堪能できるのは真冬。この時季の大根は、切り口に水分が滲むほどジューシーです。
大根の選び方
色が白く、皮にハリがあってずっしり重いものがおすすめです。葉が付いている場合は、付け根から切り落とし、別々に保存しましょう。
炊いても、焼いても、炒めても
霜が降りると一層甘くなる大根が堪能できる冬向きの料理は、おでんやふろふき。調味した昆布だしでゆっくり煮含めます。箸で切るとだしが染み出す、まさに冬のご馳走。
「大根を1~2㎝の厚さに輪切りしてフライパンで焼くのも美味しいです。その場合、太白ゴマ油やオリーブ油、グレープシード油など、風味のある油を使うのがおすすめです。両面をこんがり焼いて、だし醤油や柚子味噌で勧めます。大根を太めの千切りにしてベーコンと炒めるのも美味しいですよ」(畑先生)。
「私はハマグリ大根をよく作ります。じっくりコトコト炊いて、あんかけに。だしにとろみを付け、生クリームを加えるクリームあんもいいですよ。三ツ葉や針柚子を散らすと見栄えも豪華です」(坂本さん)。
大根はハマグリだしとカツオ昆布だしを合わせて炊き、生クリームを加えたあんに。エビ・ハマグリ・三ツ葉・柚子皮をのせた贅沢でありながらホッとする一品。
シャキシャキ感を楽しみたい、水菜
京菜とも呼ばれる「京の伝統野菜」です。寒さに比較的強いため、冬の貴重なビタミン源として関西を中心に古くから親しまれてきました。似た葉物に壬生菜(みぶな)がありますが、こちらは水菜と違って葉にギザギザがなく、ピリッとした辛味があります。
生でも食べられる小株取りのサラダ水菜が出回るようになって以降、全国区の冬野菜になりました。大阪名物のハリハリ鍋には欠かせませんが、火入れする場合は露地栽培の水菜が向きます。
水菜の選び方
葉の緑色が濃く、鮮やかなものが新鮮です。
昔ながらの露地栽培物は風味が強く、茎がしっかりしているので持ち重りがします。根元に砂や土が混じっていることが多いので、しっかり水洗いしてから使いましょう。
豚肉、鶏肉とも相性よし
大阪名物のハリハリ鍋は、かつては庶民にとって身近だったクジラ肉と水菜だけを醤油味のだしで煮て、ハリハリッと音を立てながら食べる冬の風物詩でした。今はハリハリと言えば豚肉で、クジラ版を知る人も少なくなってきています。「水菜は鶏肉とも牛肉とも相性の良い野菜。薄揚げと炊くのも美味しい葉物です」(畑先生)。
「イノシシ肉にも合いますね。味噌味にして、煮込み風にするのも身体が温まります」(坂本さん)。
年越しの黄柚子
汁物の吸い口、煮物のあしらいなど、季節感と彩りを添える脇役として大活躍するのが黄柚子です。秋口頃から入手できますが、「出始めの柚子は果汁の酸味が強めで、レモンのような味わいです」(坂本さん)。
ところが年を越すと、一転まろやかに。「針柚子にする皮にも甘みが出てくるので水にさらす手間も不要です」(畑先生)。その分、量はたっぷり使いましょう。
プロの世界では、柚子を使うのは節分まで。立春以降、その役目は木ノ芽にバトンタッチされます。
➡ご紹介した料理のレシピは、「『味菜』の割烹料理 冬(1~2月)の野菜編」で配信。店主・坂本 晋さんの調理指南にご注目を!
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