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【レシピ付き】真丈椀 Vol.2 兵庫『fuku』

淡路島・南あわじ市にある割烹『fuku』。店主・服部洋志さんは「島の食材の素晴らしさを、ストレートに表現することができれば」と話します。「今しか味わえない、山海の恵みを」と真丈椀に用いるのは、生コノワタ(ナマコの内臓)。酒肴のイメージが強い素材と、ホロリとした苦味が広がる菜の花。個性ある素材を取り合わせた、淡路島ならではの春の椀です。

文:船井香緒里 / 撮影:太田恭史

兵庫『fuku』服部洋志さん作
このわた真丈 たたき菜の花のお椀

南あわじ市で生まれ育った服部さんは、京都『菊乃井』で日本料理の土台を学び、『祇園 大渡』ではライブ感あるカウンター割烹の極意を会得。地元に店を構え、日々、島の食材と向き合い、おまかせコースにて手腕を発揮する。

魚介であれば、毎日のように由良(ゆら)や灘(なだ)などの漁港に出向き「都会へ出荷する前に、自分が最高だと直感した素材を選ばせてもらいます」。名店仕込みの丁寧な手仕事で挑むのは、シンプルでいて端正な味づくり。

「真丈椀」というお題に、服部さんは「クセが強いと思われがちなコノワタを主役に据えます」。といっても、使うのは一般的なナマコの内臓の塩辛ではなく、フレッシュな生コノワタ。薄葛でほんのりとろみをつけた吸い地には菜の花を浮かべ、春の香りとほろ苦さを添える。

“コノワタ”は庖丁で叩き、すり身との一体感を生む

太くて弾力のある生コノワタは、地元の海参(かいじん)加工卸問屋・水産会社『品川水産』より。今の時季だけ入手できるのだという。「ナマコの旬は、産卵期の冬から春です。鮮度の良いナマコから取った腸(はらわた)は、清々しい風味が魅力。何より、厚みと弾力が凄いんです。魚の身に例えるなら“活かってる”状態でしょうか」と、服部さんは目を輝かせる。

「新鮮なナマコの腸は、加熱すると澄みきった磯の香りが広がります。ですから、あえて真丈にしようと考えました」。

腸は細かく刻み、さらに庖丁で叩いたものをすり身に混ぜ合わせる。「しっかりと叩くことで、プルンと柔らかい質感になるんですよ」。

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