【レシピ付き】創意あるエビ料理 Vol.3 大阪『弧柳』
近海の魚介やなにわの伝統野菜を、コース料理の随所に取り入れ、大阪ならではの日本料理を表現する『弧柳(こりゅう)』。北浜・東横堀川沿いの瀟洒な一軒家に移転して、約1年が過ぎた今。店主・松尾慎太郎さんは「修業先『浪速割烹 㐂川(きがわ)』で会得した昔の仕事を、見つめ直す大切さを改めて感じています」と話します。
今回、ご考案いただいたエビ料理にその真意が結集。「『㐂川』の大親父(上野修三氏)が好んで作っておられた『鬼殻焼き』を、大阪湾で獲れた2種のエビを使って表現しました」。泉州産の「足赤エビ」と「トビアラ」、それぞれの個性を余すところなく引き出した、新年にふさわしい華やぎのある一品です。
大阪『弧柳』松尾慎太郎さん作
足赤エビとトビアラのいとこ焼き
「エビの旨さを余すところなく引き出すには、殻ごと使うに尽きます」と松尾さん。その料理のルーツは、エビを殻つきのまま背開きにし、タレをかけながら焼く「鬼殻焼き」にあった。
一方で、松尾さんは「エビの身の繊細な食感、ふっくらした実質を生かすことはできないか?」とも考え、開いた足赤エビに、叩いたトビアラの上身を厚めにのせた「二身(ふたみ)焼き」という手法に辿り着く。
トビアラのワイルドな旨みを引き出したタレ
紅白模様の足が美しい足赤エビ。クルマエビ科の大きなエビであり「身の味わいは濃厚です」と松尾さん。対してトビアラはクルマエビ科の庶民的なエビ。「大阪では大きいものをトビアラ、小さいものをジャコと呼びます。身質が柔らかく、ミソの甘みが強いですね」。
左が足赤エビ、右がトビアラ。
まずは、トビアラを使い、かけ焼きのタレを作る。鍋に太白ゴマ油をひき、頭を炒める。「木べらなどで思い切り潰しながら炒め、殻やミソの旨みを引き出します」。殻が赤くなれば日本酒を加え、鍋にこびりついた旨みをこそげ取る。アルコール分が飛んだら濾し器で濾し、薄口醤油とみりんで味を調えた。
「頭を軽く焼いてだしを引く場合もありますが、それだとクリアな味わいに。今回は、トビアラが持つワイルドな旨みを重視したいから、しっかりと炒めて潰すに至りました」。
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