上野修三の古典

【レシピ付き】「鱧だし淡口醤油ダレ」が決め手、上野流・鱧の焼き物

大阪の7月は祭り月。昔はこの時季のご馳走といえば鱧の蒲焼だったそうです。「夏の鱧の旨みは淡泊やから、タレはもう少し薄味の方がええのと違うかな?」。昭和の後期、法善寺横丁で『浪速割烹 㐂川(きがわ)』を営んでいた上野修三さんが注目したのは、ヒガシマル醤油の淡口醤油。鱧の中骨やアラでだしを取り、淡口醤油とみりんを合わせて、万能な焼き物ダレを考案しました。その「鱧だし淡口醤油ダレ」のレシピを大公開。夏野菜と合わせた上野流の鱧の焼き物2種も併せてご紹介します。

上野修三(うえのしゅうぞう):昭和10年、大阪・河内長野に生まれる。ミナミでの修業時代を経て、1965年、『㐂川』を創業。なにわ伝統野菜を発掘するなど、大阪らしい料理を追求し、浪速割烹のカタチをつくる。60歳で開店した『天神坂上野』は伝説の割烹として名を馳せた。現在は、なにわの食文化を綴る随筆家としても活躍。近著に「浪速割烹㐂川のおいしい野菜図鑑」春夏編・秋冬編(共に西日本出版社)がある。

聞き書き:中本由美子 / 撮影:宮本 進

鱧の焼き物に、淡口醤油のワケ

大阪の初夏を彩る旬魚といえば、鱧でおます。出始めは、走りの初々しい味わいを「鱧ちり」でお勧めするのが定番やね。湯引きにして冷水などに落とし、冷たくしていただくことから、京都では「落とし」と呼びますな。

ところが、7月の祭り月ともなると、「鱧ちりはもう食べ飽きたわ」なんて声がお客さんから聞かれるようになる。それで、鱧ちりではないご馳走を、といろいろ焼き物を工夫したもんだす。

昔は、天神祭の頃、魚屋にズラーっと鱧の蒲焼が並んでましてネ。鱧は淡泊な味わいやし、身が白いから塩焼きにしても味気ないんだす。それで旨そうな醤油色を付けた蒲焼が定番になったんやろうけど、濃い味を付け過ぎたら、鱧本来の味わいがちょっと弱く感じられまっしゃろ。

そうなると、頼りになるんが淡口醤油。幽庵地にして鱧を漬け、味を含ませてから焼いてよし。そこに卵黄を加えて、化粧焼にするもよし。名残りの木の芽を叩いて散らしたり、振り柚子をするのもええね。

ここで、もうひと手間。三枚におろしたら、頭や中骨が余りまっしゃろ。これを焼いて酒と水で煮出し、「鱧だし」を取っておくれやす。半量になるまで煮詰めて焼き物のタレに使うと、鱧の持ち味がぐっと深まりまっせ。白子や卵を持つようになったら、これもタレに加えると、さらに旨みが増しますな。

万能「鱧だし淡口醤油ダレ」の作り方

鱧の頭や中骨など、アラを煮出した「鱧だし」を煮詰めて、淡口醤油・みりんと合わせた「鱧だし淡口醤油ダレ」。コレがなかなか万能なんでっせ。

鱧の幽庵地としてもええし、かけ焼する時のタレにしてもええ。今回ご紹介する2品でも、下味に、味付けの要所に、仕上げのタレに、と大活躍。仕込んでおいたら重宝すること請け合いだっせ。

鱧の中骨や頭などのアラを焼き色が付くまで焼く。
鍋に酒と水を同割で合わせ、①を加えて煮出す。

鱧の中骨を焼き、酒と水で煮出す

②を濾し、半量になるまで煮詰める。
③の鱧だし1:淡口醤油1:みりん1を合わせる。

鱧だしと淡口醤油・みりんを合わせて焼き物のタレにする


鱧の枝豆焼

鱧の枝豆焼——鱧にも枝豆にも「鱧だし淡口醤油ダレ」を含ませた、初夏らしい焼き物

鱧と時季を同じくして、旬を迎える野菜に枝豆がありますな。大阪では近年、八尾の枝豆が人気で、鮮度がええから風味もよろし。鱧と枝豆、これがなかなか相性ええんでっせ。

枝豆を茹でてすり鉢でなめらかにすり、ペーストにしてネ。鱧に塗って焼くと、初夏らしい焼き物になりますやろ。ちょっと硬めに茹でた粒もペーストに加えると、枝豆らしい食感も楽しめますな。

鱧の方は、先にご紹介した「鱧だし淡口醤油ダレ」に1時間ほど漬け、味を含ませておくれやす。これを、風通しのええところに陰干しする。室内やったら、扇風機に当てて風乾(ふうかん)してもよろしいな。表面が乾いたら、両面を素焼きして、先の枝豆ペーストを塗って焼き上げまひょ。

実は、枝豆ペーストの味付けにも「鱧だし淡口醤油ダレ」を使てましてネ。鱧の旨みが底味となって、枝豆の青々しさや香ばしさが際立つんですな。

鮮やかな黄緑の彩りもきれいやし、冷めても美味しいから、お弁当のおかずにしてもええね。5月やったら、空豆で同様に仕立てても旨いですな。

「鱧の枝豆焼」の作り方

<鱧の下準備をする>

鱧の上身を骨切りし、「鱧だし淡口醤油ダレ」に1時間ほど浸しておく。
①に金串を打ち、タレが乾くまで小1時間、風干しする(扇風機に当ててもよい)。

鱧をタレに漬け、風干しする

<枝豆ペーストを作る>

枝豆を塩茹でする。塩の加減は薄めにすること。サヤから豆を出す。
すり鉢で③を100g分、なめらかになるまですり潰す。
「鱧だし淡口醤油ダレ」を大さじ1強・卵黄1個を加えて味を調える。
③を50g分、粒のまま加え、混ぜ合わせておく。

枝豆ペーストを作る

<焼き上げる>

②の両面をサラマンダーで軽く焼き色が付くまで素焼きする。
身の方に⑥をたっぷりと塗り、焼き色が付くまで焼く。

鱧の素焼きに枝豆ペーストを塗って焼き上げる

一口大に切り、皿に盛る。

鱧の管巻焼

鱧の管巻焼——管ゴボウを鱧の身で巻き、「鱧だし淡口醤油ダレ」でかけ焼に

秋になると直径3㎝以上のぶっといゴボウが出てきますやろ。これを芯にして脂ののった秋鱧で巻くと、食べ応えがあって旨いんですな。「鱧の八幡巻」としてよぉお出ししていましたが、えらい評判でしてネ。
これを初夏の新ゴボウでやったらどうやろ?と工夫したのが、今回の「管巻(くだまき)焼」だす。

新ゴボウは、秋のもんより細くて、香りも優しいでっしゃろ。せやから、存在感を出すために、3本重ねて鱧でぐるっと巻いてみたんだす。くっつけるのに糊代わりに使ったんは、鱧の端身(はしみ)をすり身にしたもの。

先の枝豆焼にしても、この管巻焼にしても、上身のええとこしか使いまへん。すると、尾の身が余りますやんか。それを、庖丁でしごいて、すり鉢で当たって、なめらかなすり身にしましてん。

ゴボウはそのままやとちょっと歯ごたえが強すぎるので、芯の部分をくり抜くとええね。コレ、管(かん)ゴボウと呼びますな。空洞があるから、見た目も面白いし、食感も軽くなって鱧の弾力も生きるって寸法だす。

焼き上げる時のかけダレは「鱧だし淡口醤油ダレ」に卵黄と一味唐辛子を加えたもの。卵黄は濃度を付けて絡みやすくするだけでなく、艶出しの役割もあるんでっせ。一味唐辛子は、お好みで。辛味を利かせるというより、味の引き締め役ですな。

焼き上げて皿に盛ったら、「鱧だし淡口醤油ダレ」を添えるか、かけるか、流し入れるか。ちょっとつけながら食べると、塩梅がよろしいでぇ。

「鱧の管巻焼」の作り方

<管ゴボウを下煮する>

新ゴボウを6~7㎝長さに切り、糠(ぬか)入りの水から茹でて火を通す。
金串を内側の輪に添って刺し、ゴボウをぐるっと回す。逆側も同様にし、金串で中身を押し出す。
②を「鱧だし淡口醤油ダレ」で15分ほど、とろ火で煮る。すぐに陸上げしておく。

管ゴボウを作り、鱧だし淡口醤油ダレで煮る

<鱧の下準備をする>

鱧の上身を骨切りする。15㎝長さに切り、串を2~3本打ち、サラマンダーで皮側のみを焼く。
④の端身(尾側の身など)を出刃庖丁の峰で叩いて柔らかくする。出刃庖丁で身をこそげ取る。
⑤をすり鉢に入れ、卵白・浮き粉・山芋とろろと塩を加え、なめらかになるまでする。

鱧の皮を焼く。鱧のすり身を作る

<管巻焼にする>

③に片栗粉をまぶし、⑥のすり身を糊代わりにして、3本をくっつける。表面にもまんべんなく⑥のすり身を塗り付けておく。
④に片栗粉をまぶし、⑦に巻き付ける。

管ゴボウに鱧のすり身を塗って鱧で巻く

⑧に金串を2本打ち、サラマンダーで焼く。途中、金串を打ち直し、まんべんなく全体を焼き上げる。
「鱧だし淡口醤油ダレ」に卵黄と一味唐辛子を加えて⑨に塗り、サラマンダーで焼く。途中、金串を打ち直し、先のタレを再び塗って、まんべんなく全体に焼き色を付ける。

鱧の管巻焼に「鱧だし淡口醤油ダレ」を塗り、焼き上げる

<仕上げる>

⑩を一口大に切る。うつわに盛り、振り柚子をする。「鱧だし淡口醤油ダレ」を流し入れる。

超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇、特選丸大豆うすくちしょうゆ超特選丸大豆うすくち吟旬芳醇(左)
国産原料を100%使用。丸大豆熟成しょうゆもろみと、米糀の二段熟成甘酒がひとつになり、まろやかな味わいに。400㎖。
特選丸大豆うすくちしょうゆ(右)
国産原料を100%使用。淡く上品な色合いと、おだやかな香りで素材を生かします。500㎖。

■問合せ:ヒガシマル醤油㈱ お客様相談室 ☏0791-63-4635(受付時間9:00~17:00、土・日曜・祝日・年末年始・夏期休暇除く)
https://www.higashimaru.co.jp

フォローして最新情報をチェック!

Instagram Twitter Facebook YouTube

この連載の他の記事上野修三の古典

無料記事

Free Article

おすすめテーマ

PrevNext

#人気のタグ

Page Top
会員限定記事が読み放題!

月額990円(税込)初回30日間無料。
※決済情報のご登録が必要です