うつわ×食ジャーナル

400年の伝統のうつわ産地・波佐見が発信する、技あり&イマドキのうつわ

日本の高級磁器の産地・有田と共に歩んできた長崎県の波佐見(はさみ)が、ブランド産地として注目を集めるようになったのは2000年以降。2016年には有田と共に「肥前窯業圏(ひぜんようぎょうけん)」として、日本文化遺産に登録されています。勃興の立役者といえるメーカーが、今回紹介する「マルヒロ」。伝統のやきもの産地から発信される遊びのあるデザインが、うつわの楽しさを広げています。

撮影・文:沢田眉香子

目次


伝統に裏打ちされた技と、意表を突くアイデア

さまざまな窯元や作家から頂くリリースの中でも、波佐見焼のブランド、「マルヒロ」からのニュースには、驚かされたり、感心したりで、期待を裏切られない。

例えば、ペットフードのキャニスター(蓋付き容器)、フルーツポンチのようなパステルカラーの蕎麦猪口、国内外のデザイナーとのコラボレーションによるテーブルウエア、クスッと笑えるアートグッズ。「そう来たか?」と意表を突かれ、「自分はまだ、やきものの面白い世界を知らないのかも?」そんな気にすらなってくる。

jou8400b路上のオブジェがインテリアになった「CONE 一輪挿し」。ジョークオブジェとして楽しい。

とはいえ、波佐見のやきもの、と聞いても、ピンとこない人も多いかもしれない。

鍋島藩の献上品だったルーツを持つ、日本屈指の高級うつわブランド産地・有田と同じ肥前エリアにありながら、波佐見は日用食器づくりに重きを置いていたこともあって、かつてブランド産地として認知はされていなかった。

しかし実際のところ、波佐見は分業でクオリティの高いうつわを作る生産体制を、有田と共有していた。伊万里(いまり)として海外に輸出されていた磁器や、有田焼として国内で売られていたうつわの中には、実は、波佐見でつくられたものも含まれていたのだ。

1980年ごろ、やきものの世界に高級和食器のバブルが到来したが、景気の後退と共に生産は縮小。波佐見も同じ運命をたどり、さらに、製品に正しい産地表記が求められるようになったことから、有田に比べて知名度が低いというハンディを抱えながらも、ブランドとしての打ち出しを模索する。そして、斬新なうつわづくりで新しい波佐見イメージを打ち立てたのが、産地問屋として3代続く「マルヒロ」だった。

jou0001c「マルヒロ」が2010年に発表したカラフルなラインアップ「HASAMI」シリーズ。プレートのほか、マグカップや角皿もある。おもちゃのような色展開で「薄く繊細な白磁」という産地のイメージを脱却。

受け継がれた技術は高く、有田のように高級食器の格式や伝統にしばられず、自由度が大きい。「マルヒロ」は、そのポテンシャルを得意の日用食器に発揮して、現代のカジュアルなうつわブランドとして人気を得ていった。

「マルヒロ」が展開するブランドのひとつ「BARBAR」の三箇条は「ものづくりの現場で培われてきた技術」、「時代を超えても変わらない魅力」、「自由で枠にとらわれないアイデア」。一見、自由で気の利いたデザインと見えて、その形や色は、クオリティと量産とを両立させる優れた職人の技によってつくられている。伝統的な産地にしかできない遊びが、「マルヒロ」の魅力かもしれない。

ここからは、うつわ好きもグッと来る、そんな「マルヒロ」のプロダクトをご紹介しよう。

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