和食のいろは

【レシピ付き】『味菜』の割烹料理 初秋の魚介編

旬の魚介をテーマに、割烹『味菜(あじさい)』の店主・坂本 晋さんに和食の基本調理を学ぶ本連載。今回は9・10月の旬魚をテーマに、3品の料理のレシピをご紹介…するつもりが、写真のように戻りガツオとサンマは2つの料理の盛合せ。レシピは、トビアラを含めて計5品となりました。素材の持ち味を率直に引き出すのが、和食一筋50年の坂本さん流。シンプルながら、説得力のあるいぶし銀の仕事をご覧ください。


坂本 晋(さかもと すすむ):岐阜県高山市出身。18歳から下呂温泉『吉泉館』で修業し、大阪・北新地の料亭『神田川』へ。割烹『味菜』を開店し、40年が経つ。淀川や大阪湾の地魚に注力しながらも、全国各地から産地直送で旬の食材を取り寄せ、割烹料理に仕立てる。

文:中本由美子 / 撮影:東谷幸一

「サンマの肝幽庵焼と肝煮」でワタの旨みを楽しませる

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サンマはワタ(肝などの内臓)が一番旨い、と昔から食道楽の方々はよく仰っていたのですが、この頃は苦手というお客も多くて…。なんとかワタの旨さを伝えたいと思って考えたのがこの二品です。

ワタは苦い、という印象があるみたいなので、しっかりと火を入れて生臭みや苦みを飛ばします。この方が旨みも力強くなりますね。サンマは腹まわりが太った大きなものを選ぶと、ワタの味もしっかりしていて、まろやかさがあるんですよ。

肝幽庵焼は、ワタを炒めて、一部を幽庵地に加え、残りはみじん切りにしてサンマの片面に塗って焼き上げます。ペーストにせず、みじん切りにした方がワタの存在感が感じられるでしょう。この時、皮側と身側、それぞれ一方にだけ塗ったものを盛り合わせると、ワタの感じ方が微妙に変わって面白いと思います。

もう一品は、肝煮。サンマをぶつ切りにしてワタごと炊き上げています。まずは中骨が柔らかくなるまで3時間ほど酢水で下煮。その後、甘みとショウガの風味を加えた煮汁でじっくり約2時間炊きます。半日ほどおいて味を染み込ませたら、最後は煮汁を煮絡める。ワタの味が全体に行き渡って、こっくりと深みのある旨みが楽しめますよ。

今回は、まだ残暑の残る9月なので大葉の千切りをまぶしましたが、粉ガツオや切りゴマで風味を添えても美味しいですね。

【作り方】
<サンマの肝幽庵焼>
①    サンマを三枚におろし、小骨を軽く取る。
②    ①の身からワタを外し、フライパンで軽く炒める。
③    淡口醤油・酒・みりんを合わせて幽庵地を作り、②のワタを少し加える。①の身を15分ほど漬けておく。
④    ②のワタの残りをみじん切りにし、少量の酒で溶いて肝ダレを作る。
⑤    ③に金串を打ち、8割程度まで焼く。片面に卵白→④の順に塗って焼き上げる。
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<サンマの肝煮>
①    サンマはワタを付けたままぶつ切りにする。
②    鍋に水と1割の酢を合わせ、①を加えて落とし蓋をし、中の骨まで柔らかくなるよう、弱火で3時間ほどコトコトと煮る。
③    ②をざっと水洗いし、水気を拭き取る。
④    鍋に竹皮を敷き、③を加える。濃口醤油・たまり醤油・酒・砂糖・みりんにショウガの搾り汁を少々合わせた煮汁で、約2時間、弱火で煮る。そのまま半日以上おいて味を染み込ませる。
⑤    ④を再び弱火にかけ、煮汁がなくなるまで煮絡める。
⑥    千切りの大葉を⑤にまぶし、サンマの肝幽庵焼と盛り合わせる。
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