「祇園さゝ木」一門会、師弟セッション

『衹園さゝ木』5月の献立会議【前編】

京都『衹園さゝ木』の大将・佐々木 浩さんと調理スタッフで翌月のコース内容を考える献立会議。今回は5/8~6/1に提供する夜コースの会議模様をお届けします。春から夏に移りゆくこの時季は、目玉となる旬食材が少なくなる端境期。その中で、「おいしい、そして楽しい」献立をいかに組み立てるか、案を出し合います。


『衹園さゝ木』の献立会議:2023年、リニューアルを経てコンセプトを「師弟で挑む味づくり」に。調理スタッフと共にアイデアを出し合い、若い感性と佐々木さんの経験値を掛け合わせ、献立を組み立てる。夜のコースは基本的に、先付、前菜、椀、向付2品、鮨2カン、焼き物、進肴(すすめざかな)、鉢物、ご飯物、デザート。昼のコースは夜のメニューを取り入れつつ、料理6品、ご飯、デザートで構成する。献立会議を経た後、すべての料理を試作し、改めて試食会でサービススタッフや姉妹店『衹園 楽味』のスタッフが試食、最終チェック。料理内容は、その都度、修正・改良が加えられる。

文:阪口 香 / 撮影:ハリー中西

目次

佐々木 浩さん(『衹園 さゝ木』店主)

1961年、奈良県生まれ。前衛的な味と軽妙な話術で場を盛り上げるカウンターの名手。97年に独立し、衹園町北側に『衹園 さゝ木』開店。2006年、現在の地に移転してからはいよいよカリスマ性を発揮。「弟子を育てる店造りを」と再度改装を施し、23年8月、リニューアルオープンを果たす。

gio0026-1a_4359調理スタッフは、右より煮方を務める坂東春樹さん、田中涼平さん、千谷友哉さん、桑原汰知(たいち)さん、達川怜平さん、ピスケルニック・ナディアさん、下澤海里(かいり)さん。

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佐々木
4月に入って一年生が何人も入ってきてくれたな。いきなり献立会議で発言するのは難しいと思うけど、積極的に意見を出していってほしい。
そのために何をすべきか。まずは興味を持っていろんな料理を見ることが大事。本屋に行ったら料理本や雑誌があるやろ。「かっこええなぁ」と思ったら、「この器に盛ったこの料理、かっこいいと思いません?」ゆうて見せてくれたらいい。料理屋へ食べに行った時の写真でもええ。自分の感性で「いい!」と思ったものを伝えるんや。それに対して僕も意見するし、ほんまに「ええやん!」と思ったらみんなで料理を考えるから。その積み重ねでどんどん感性を磨いていってほしい。
なにげなしに座って、「先輩らがしゃべってはるなぁ」では意味ないで。参加することに意義があるから。
一年生:
はい!!

先付

佐々木:
まずは先付からいきましょか。どんどん案を出していきましょう。
坂東:
初ガツオがメインの一皿を考えました。
器にネギをたっぷり入れた白酢を敷き、燻すか酢〆にしたカツオを置きます。カツオには酒盗が合うので、酒盗と煮切り酒を合わせたもので炊いたウドか白ズイキを添える。上に甘酢漬けにした新ショウガをのせます。
田中:
僕が考えたのは伊勢海老の先付です。低温の油で火入れし、水ナスと共に並べ、伊勢海老の頭から取った濃厚なエビだしダレをかける。ライムで酸味を利かせ、花穂ジソを散らします。
千谷:
ウドの酒煎り、ミル貝やアサリを並べ、上から新緑をイメージしたクレソンのすり流しをかけます。仕上げにこれからおいしくなってくるウニをたっぷりのせて。
桑原:
新タマネギを焼いてソースにし、鬼木の芽を加えて緑色に。器に敷き、瓜系の漬け物、そしてカツオを重ねます。カツオは油通しして皮目だけ炭火で焼いたもの。ミョウガの甘酢漬けと木の芽を添えます。
達川:
僕も初ガツオで考えました。藁か炭で皮目をバリッと焼き、ズッキーニかアスパラガス、地漬けしたパプリカと共に盛り、上からグレープフルーツのだしジュレをかけます。

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ナディア:
冷製のトマトスープにフキ、レアに火入れした伊勢海老をのせた一品。色合いもいいかなと思いました。
下澤:
空豆のすり流しにアオリイカと炭火で炙ったタコをのせ、グレープフルーツを刻んで加えたジュレをかける一品を考えました。

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佐々木:
やっぱり初ガツオを使った料理が多いね。この時季うまいもんなぁ。
僕が考えてたのもメインはカツオ。炙りにして、20~25秒くらいのヅケにする。水ナスと交互に盛って、ミョウガ竹の甘酢漬けを添えた一皿や。

カツオと水ナスを軸にして……あとウドとか。
ソースをどうするか。坂東は白酢と言うたな。それをちょっとヒネッて、酸を酢じゃなくて意見があったグレープフルーツの果汁、さらに粒も加えるのはどやろ。爽やかな感じや。ミョウガ竹の甘酢漬けを添え、木の芽を散らしたらキレイちゃうかな。
千谷:
カツオは藁焼きや炭焼き、油通しに酢〆といろいろありますけど、何が一番いいですかね。

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佐々木:
僕は炭焼きがええと思う! 強火で皮をパリッとさせる。初ガツオは戻りガツオに比べたらあっさりしてるけど、千葉県房州のカツオやったら脂のってるからそのまま焼いてもうまいで!

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