【レシピ付き】筍2品——だしをたっぷり含ませた炊合せ&木ノ芽和えを進化させた木ノ芽煮
筍が登場すると、いよいよ春本番。4月に入ると大ぶりのものが手に入り、煮たり、焼いたり、和えたりして料理に生かされます。『瓢亭』では、昔ながらの料理と、それを進化させた新しい料理の両方を提供しています。教えていただいたのは、だしの旨みをたっぷりと含ませた炊合せと、木ノ芽和えを温かい煮物に仕立てた木ノ芽煮の2品。筍独特の野趣味や甘みをいかにデザインしているか、伝統の料理を当代がどのように工夫しているか、レシピと共に解説していただきました。
髙橋義弘:創業450年を超える老舗料亭『瓢亭』の15代目当主。1974年、14代目髙橋英一氏の長男として京都に生まれる。東京の大学を卒業後、金沢の日本料理店『つる幸』で修業を積み、1999年帰洛。海外のシェフたちとのコラボレーションなど国内外を問わず、京都の懐石料理を伝える活動に尽力。2015年、15代目に就任し、2018年に東京店を出店。老舗の味を守りながら、時代に即した現代的な日本料理にも取り組み、新しい美味しさの提案を続けている。
筍は、京都の春の料理に欠かせない食材です。
おせちの煮しめにするもの以外は、ほぼ京都産を使っています。明治時代から継承されている栽培方法で作っておられる村上 薫さんの筍を毎日届けてもらっています。京都は塚原や長岡、山城などの産地がありますが、村上さんのはとりわけ柔らかくてアクが少なく、色白なのが特徴です。
今回は出始めなのでやや小ぶりですが、4月に入ると大きくなり、さらに柔らかくなります。年によって違いますが、3月後半から5月のGW頃まで使います。
筍は鮮度と下茹でが大事です。時間が経つとえぐみが増すので、筍が届いたら早めに湯がきます。時間は30分くらいで、他のものに比べて村上さんの筍は短時間で柔らかくなります。湯がいた後は自然に冷まし、そのまま一晩置いたものを冷蔵庫で保存します。東京店で使う筍は、湯がいたものを本店から送っています。
形や大きさで使い方が変わります。大きなものは輪切りにして煮たり焼いたりし、小さいものはお椀のあしらいや八寸の田楽にします。炊合せには、大きさを揃えるようにして切り分けて使います。
生のままお造りみたいにして出されるところもありますが、いくら鮮度が良くても苦みや渋みは必ずあり、人間の身体では消化しにくいものです。『瓢亭』では必ず火を入れ、だしで炊いています。だしの旨みを含ませると筍はぐんと美味しくなるので、木ノ芽和えや田楽の場合もだしで炊いたものを使います。
筍がピークの4月は、コースの中で3品程度の筍料理をお出ししています。木ノ芽和えや田楽、炊合せ、筍ごはんなどで、ご希望があれば、焼き筍や揚げ物、筍寿司、今回ご紹介する木ノ芽煮をお出しすることもあります。
筍の炊合せ——だしをたっぷり含ませてから、調味料を加えます
炊合せ 筍 ワカメ 鯛の子 フキ 木ノ芽 器/黄交趾唐松絵鉢 永樂即全
筍は、下茹で(糠湯がき)してアクやえぐみを取って1日置き、糠抜きをしてから八方だしで炊きます。炊く時は、だしは多めで、追いガツオだけでなく昆布も加え、コトコト炊きます。アクが強い食材は調味料で味を付けるより、濃いめのだしで煮含め、その旨みを感じてもらう方が美味しくなるからです。
湯がいた筍は水分が多いので、炊いている時に煮汁に水が出て味が薄まることがあります。そのためにもしっかりとだしを含ませ、調味料で調整します。
少し甘みがあった方がご飯にもお酒にも合いますね。甘さが単調にならないよう砂糖とみりん両方を使います。砂糖が多いと甘みが口に残るのでご飯向き、みりんは消える甘みなのでお酒に合います。
色を出来るだけ付けたくないので、醤油は控えめにし、薄口醤油を使います。一晩置くと味の付き具合がちょうど良く、別に炊いたワカメ、鯛の子、フキと共に器に盛り付けます。
筍は単体でも、他の食材と組み合わせても美味しく、木ノ芽と好相性です。香りもご馳走なので、たっぷりと上にのせます。
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